【実況者】こちら、本拠地です。 (ページ13)

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#10 ※若干の流血表現注意ページ13

一部目の全ての企画が終了し出口付近まで沢山のクリエイターさんが並んで来てくれたお客さんにハイタッチするというプチイベントがやってきた。私にとっては鬱イベントだが、向こうにとっては楽しみなことだろう。一度はこっち側も味わってもらいたいものだ。と思っていたら私やねが、ぴくとさん、ふうはやさんがいる奥の方までお客さんがやってきた。
随分と流れが速い。それぞれのクリエイターの前で立ち止まり一言二言話す人、過激なファンはめっちゃくちゃ話して流れを止める。そしてスタッフに怒られて逆上する。
意外と穏健なファンが多いのか割と私のところでも話しかけてくれることも増えた。少しだけ嬉しい。

かなりの人の数を捌き、後半の方に入った頃割と綺麗めな人と接して流そうとした時。
鋭利な刃物が私の腕部分のパーカー生地と腕の皮膚を斬り裂いていた。
当然斬られた痕から血が流れて生地ごと真っ赤に染め上げていった。
掌に傷がつくことも厭わず、急いで刃の部分を掴んで奪い、その行動で視線がバックの所にいって一瞬で合点がいった。黒くて、歪な顔をした猫のぬいぐるみ。凶器を床に捨てて

「そういうことかよっ…」

小さく悪態をつき、小さく謝罪してダッシュで化粧室に向かう。勿論その女性は警備のおっさんに現行犯で捕まっていたがそんなことを気にすることが出来ない。血が止まらんしマジで危ねぇ。

血塗れになったパーカーを脱ぎ捨ててTシャツのみになった状態で腕と手とパーカーも洗う。
包帯ってあったっけ…。と探すために楽屋に戻るとそこには何故かねががいた。

「なんで…いるんだ？」

掌で止血しながらそう聞くと

「バックれた」

「ほんとにお前一回怒られろ」

「やだね。…どうせ包帯とか巻くのに時間かかるんだろーなーって思ったし」

来ちゃったっと星マークが飛びそうなほど甘く言ってきた。頼む出来れば戻ってくれ、とも思うが不器用なことは自覚済みなので諦めて腕を出す。

「結構斬られたね…」

「過激な人もいるもんだな」

肩を竦めてそう答えた。直接来たことは数えるほどしかないがまぁ、過去一のやられ具合だろう。逃げることしか出来なかったことを悔やむ。
案外器用なのかちょっと擽ったい痛みだけで済み、自由に動かせるレベルになった。

「ありがとうな」

「んーん、別に。戻ってるね」

「…ん、私も」

「お前はだめ」

「えー」

なぜ否定されなければならないのか分からない。首を捻ると

「危ないから」

それだけを言った。