ESCAPE GAME

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「で？Aはうちで働かへんの？」



「いやー、ははは」




「なんやねん。」





淳太さんがだんだん酔ってきた。




このくだりはいつものことで、淳太さんは酔うと、いつも私を勧誘してくる。



「Aなら、結構な戦力にもなりそうやし、入ってもらいたいねんけど。」




「いやー、ははは」




「さっきと返事が全く変わってへんやん。」




私がそれをかわすのも、いつものこと。




「何で入らへんの？」



「...集団行動向かないタイプなんですよ、気分屋だし。」




「ウチの従業員もそんな奴ばっかやで。


ホンマ、あいつらは.....」



あ、話それた。そして、始まってしまった。




まあ、この人も色々と苦労しているみたいだから、愚痴もでるだろう。









「ああ、大変ですね。」



「せやろ。はぁ.....」



ダメだ、笑いそう。



だって、もう、愚痴の内容が。



仕事のこととかではなく、完全にプライベート




どうやら、淳太さんはイジられキャラらしい。




シゲオカさんという人にいつもやられるとか。





「で、入らへん？」



「覚えてたんですね、その話。」







・






・






「じゃ、また。」




「おん。ごめんな、遅くまで。送ろか？」



「大丈夫ですよ。」



「ほな、気い付けてな。いつでも電話して。」




「はい。」




淳太さんと別れ、歩きながら財布から取り出したのは、


前に一緒に仕事した時にもらった淳太さんの名刺。




淳太さんとは、これまでも何度かご一緒させていただいて、敬語ではあるものの、



ある程度のことは言い合える仲である。




名刺に書いてあるのは、事務所の住所と電話番号。


『いつでも電話して』



......まだだ。



今はまだ、行くべきじゃない。






しかし、思っていたよりもずっと早く行くことになるとは、思ってもいなかった。

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