ポメラニアン、拾いました。 (ページ8)

今日:34 hit、昨日:64 hit、合計:299,973 hit

2 ページ8

女は俺を抱き抱えマンションへ入る

女がパスワードらしき番号を押し、自動ドアが開くと紺色の制服をきた老人が「おかえりなさいませ」なんて頭を下げる

そのマンションは外装も内装も暗いブラウンで統一されていて、所々に置かれている観葉植物がそれらしい雰囲気を醸し出している

ロビーはやたら広くて、途中通り過ぎた廊下には“客室”なんてプレートがかかったドアか５つもくっついていた

女はそんな廊下を駆け抜けて、扉が両開きのこれまたいやに広いエレベーターは乗り込み“30”のボタンを押す

チン、と小さな音が鳴り扉が開き、また長い廊下が現れた

それを右に曲がり一番奥の突き当たりにある扉へ向かって、部屋に入る女

だだっ広い玄関には女が脱ぎ捨てた靴が2足転がっているだけで、他の靴や靴べらは愚かその腰棚には何も乗っていなかった

更に風呂場へ入ると洗面台らしきスペースは俺が住んでいる部屋とは比べ物にならないほどの広さで、置いてある洗濯機も昔誰かが言っていた高級なものだ

床にはカビ1つ見当たらずバスタブは滑らかで手触りも違いそうなことが触らずとも感じられた

そんなことを考えているうちに俺は暖かいシャワーを浴びせかけられ雨に濡れ風に吹かれすっかり汚くなった毛は元の真っ白いものにもどっていた

女はそんな俺を柔らかいタオルで俺を包み込み水気を取った後ドライヤーをかけ始める

「…君、ポメラニアンなのね」

毛の水気がすっかり飛んだころ、女は俺を見つめそう呟く

お前なんの犬種だと思ってたんだ
ポメラニアン以外に無いだろ

そんな意味を込めて1鳴きする

「…ねぇ、君男の子？

私、服濡れちゃったから着替えるんだけど、男の子なら少しの間だけあっち向いててもらえないかな」

そんな俺の声…鳴き声を華麗にスルーした女は俺の顔を覗き込むようにしてそう言う

ねえ、と空気を震わせた音がやたらどこかのメンヘラ天使の如く空から舞い降りてきたやつと似ていて俺は目の前の女の目を見つめた

俺の目を見つめ返す女の目尻の垂れた優しそうな瞳は深いコバルトブルーで、小さな頭を覆う細く柔らかそうな栗色の髪はふわふわと顔まわりを踊りながら背中へ流れている

これじゃあまるで本当にあいつの女バージョン…そこまで考えた俺は先ほど女が言った言葉をもう一度頭に思い浮かべた

服が濡れたから着替える…？？

「きゃいんっ！！」
やべえ！！！

それは流石にライン超え…！！！