ポメラニアン、拾いました。 (ページ6)

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「ぁうん…」
「んー？どしたの」

その悪魔のような可愛さに悶える私にくずはは小さく声を鳴らし、私の膝によじよじと登ってきた

「ぁお、わぉん」
「…何か言おうとしてる？」

くずはのこれまでの行動も相まって、更に私の顔を見上げ言葉を話すように鳴くその動作は意味あってのことだと思えてしまう

「どうしよう私君の言葉はわからないから…」
「あぅぅ」

意味あってのこと

それは十分すぎるくらいに伝わるけれど、流石に犬の言葉は理解できない

「あぉん、わぅんっ」
「やっぱりわかんない…」

そんな私の表情を見てもくずははその行動を止めることはなく、それどころか更に鳴き始める

理解したい

そうは思っても無理なのだ
ごめん、と続けて何度も謝りくずはの小さな体を引き寄せる
が、

「ぅ"ぅ"」
「っい…！」

くずははそれを拒むようにして私の手に噛みついた
私は思わず顔を顰め噛まれた手を庇うように胸に抱き込む
そんな間にくずはは私の膝から飛び降り部屋の隅で体を縮こめるようにしてこちらを睨んだのだ

「…ぃぅ…ごめ、急に触られたら嫌だよね
私、手洗ってくるから、好きにしてていいから、ね」

噛まれた左手はズキズキと痛みどす黒い赤が滲む

早く手当てしなければ

そう思いくずはに声をかけたわたしはそろそろと立ち上がり台所へ向かう

「…いたいなぁ」

水で傷口を流しキッチンペーパーで強く抑える
私の鼓動に合わせて鈍い痛み。白いキッチンペーパーは水を含んだことで薄まった朱色に染まっていく
それと同時に私の思考もじわじわと脳内に溢れ始めた

くずはは何でいきなり…？
私が葛葉の言葉を理解できなかったから？
それだったら…私悪くないじゃんか

そこまで考えたところで私はハッとして自分のを叩く

「しっかりしろ私」

くずはは悪くない

くずはは私が今まで見てきた数少ない犬の中でもダントツで頭が良い。人間の言葉を理解しているようだし、なぜか文字すら使えていた

それでもくずはは犬なのだ
私の期待過剰だ

くずは

白くてふわふわなポメラニアン
顔を合わせたのはつい一時間ほど前。けど、くずははこれから私の家族だ。一緒に生活していくのだ

「もう寝ようかな」

嫌な思考を振り払うようにして頭を振る。

寝てしまえば、この思考も気持ちも幾分かマシになるだろう

私はリビングにいるくずはに自分は寝ること、くずはも自由に寝ていいこと、家の中であればどこに行っても大丈夫なことを伝え寝室のベッドへ身を投げた