ポメラニアン、拾いました。 (ページ31)

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「じゃあ、葛葉は半年以内に婚約しなくちゃいけなくて、できなかったらずっとポメラニアン、って事だよね…」
「せやね、僕も流石に葛葉のお母さんには会った事ないし、本気か冗談かは葛葉しか…」

叶くんがそれを言い終わると同時に2人揃って葛葉の方に向き直る
こればっかりは葛葉の意見が絶対なわけだけど、

「…今喋れないもんねぇ」
「もう一回人型に戻れんの?」

「愛のキス、でさっ」なんて語尾にハートがつきそうな声で叶くんが言った途端、葛葉が抗議するように甲高く吠えた

私も私で密かに首を傾げる

だって、叶くんは私が葛葉に近づくの嫌じゃないの？だから私がもう葛葉に関わらないように牽制したんじゃないの？

「… はるちゃん？」
「っはい！？」

疑問に埋め尽くされた私を引き戻したのは疑問の原因である叶くん
どうしたの？と私を見つめる叶くんになんでもないよと首を振り私はひとつ深く息を吸い込んだ
叶くんの行動は謎だけどとりあえず今は目の前の問題に集中しなくては

「それ、で葛葉を人型に戻すんだよね」
「そ、多分このある一定の条件って結婚相手の候補となる人…今ははるちゃんとのキスだと思う。犬になった経緯が恋愛だからね、十分ありえる仮説じゃないかな」

「だから、ね？葛葉もやってみよ」と喉から低い唸り声をあげて後ずさる葛葉にジリジリと近寄る叶くん
葛葉は段々と壁に追い詰められ最終的に叶くんの腕の中に収まった

「ほらはるちゃんいっちゃって」
「いや、葛葉だいぶ嫌がってるけど平気なの？」

つかまってもなおジタバタとできる限りの抵抗を続ける葛葉を指さし私がそういうと叶くんは少し考えたあと、まあ平気じゃない？と笑った
私嫌がってる異性に無理やりキスするなんてしたくないよ、いや犬だけどさ…

「…葛葉なんでそんなに嫌がるん、とりあえず元に戻らなきゃ話もできないよ」
「あぅ」

私の表情を見て何かを察したのか葛葉に向き直りそう聞いた叶くん

葛葉はじっと私を見つめ、何かを伝えるように耳を揺らす
なんていっているかなんてわかるはずも無かったのに葛葉のその表情が何か悲しそうなものに見えて、ああこれは私を気遣っている時の表情だ、と葛葉が何かと私の顔色を伺っていることに気がついた

「…大丈夫、私はいいよ
なんたって、大切な飼い犬のためだからね!」

そう言い切ると同時に唇に柔らかい毛がふれ、「俺は犬じゃねええええええ！！！！！」なんて葛葉の叫び声が耳をつんざいた