ポメラニアン、拾いました。 (ページ4)

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そんな様子に私はそのふわふわした毛を撫で付け口を開く

「…今日から君の家なんだから、くつろぎなよ。このマンションがペット可なのが奇跡に思えてく…る」

そう口に出してからしまった、と息を呑んだ
私はこのポメラニアンの飼い主が、ポメラニアンを必要としていないことを、雨の中段ボールの中にいたのは"そういうこと"なのだと理解している

けど、このポメラニアンはどうだろうか

もしかするとまだ飼い主が迎えにくると思っているかもしれない
ただでさえ賢そうなこの子のことだ、自分が捨てられたと知ったらどれほど悲しむだろう
チラリとポメラニアンを見ればこちらをじっと見つめている

この純粋な瞳にそれを伝えるのか…?
冷や汗がつうと背中を伝う

「あぅ…?」

そんな私を不審に思ったのか、ポメラニアンは小さく声を上げる

そしてあいもかわらずそのルビーの瞳を私に向ける

「…えっと、君は、捨てられたと、思ってる?」
「きゅうん」
「それは、なんの表情…?」

私の質問を聞いたポメラニアンはしばらく俯いた後、そろそろと私に膝へ足をかけ、そのままゆっくりと顎を下ろした
つまり、私の膝に顎を乗せた

ああ、この子は本当に賢いのだ

犬が自分以外の生物に顎を乗せる動作、それは信頼を意味する
このポメラニアンは元の飼い主に捨てられたことを理解し、次の飼い主が私になることまで知ったうえで、まだ知り合って1時間もたたない人間に自分の身を預けようとしている

たかだかこんな小さな犬に大袈裟な、と思うかもしれない
でも、この子の行動を見れば、瞳を向けられて仕舞えばそう考えざる負えないのだ