ポメラニアン、拾いました。 (ページ20)

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葛葉と私は一枚の紙を前に2人で頭を突き合わせていた
その紙に書いてあるのは
これからやることの文字とその下に葛葉の家に行く、という文字

そこで問題だ

葛葉の家に行っても手がかりが何も見つからなかったら、もしも1週間経っても葛葉が人間の姿のままでいられたら

後者はお互い今までの生活に戻る、という意見で納得した
しかし前者の場合は葛葉の身辺以外に手がかりが見つかりそうなものが無いため困ってしまう
どうしようかと悩み始めてかれこれ10分ほど経った時

「あ"あぁっ！めんどくせぇ！！考えるより行動あるのみ！はるいくぞ！！」

葛葉の忍耐が持たなかった

いきなりソファから立ち上がったかと思うと私のコートとバッグを引っ掴む
そして私はそのついでに腕を引かれソファから立ち上がった

「手がかりなかったらどうしようだぁ？そんなんなかった時に考えりゃ良いんだよ！」
「わか、た！わかったから手を、離し…！だって葛葉のコートもって…」

無いじゃん、と言おうとした瞬間、葛葉は玄関の扉を力任せに開いた
そして、

「さっむ…？！」

外から吹き込んだ冷気にそう叫ぶと開けたばかりの扉をこれまた力任せに閉め切った

「…コート、借りてもいいすか」

そして自身の肩越しに私を振り返り、本当に小さな声でそうつぶやいたものだから私は思わず吹き出してしまう

「っ〜〜〜！わら、笑うな…！！」
「んふふ、ごめ、いいよ貸すよ」

眉をよせ睨みつけてくる葛葉に堪えきれない笑いが溢れてしまう
葛葉はそんな小さな私の笑い声にさらに眉間の影を濃くした

「…いいから早くコート貸せよ…」
「んふ、今持ってくるからまってて」

私がそう返すと葛葉はそういえばずっと握っていた腕を離し、早く行けと言わんばかりに私を睨めあげた

そんな葛葉を玄関に置いて私がやってきたのは服を置いてある小さな空間、いわゆるウォークインクローゼットだ
貸す、といっても細身の割に身長の高い葛葉に貸せるような大きなコートに思い当たりはない。一つを除いては

数の少ない服をかき分け引っ張り出したそのコートは黒いキルティング生地のロングコート

いつしか友人のコンサートスタッフを手伝った時にもらったそれは私が着ると肩の縫い目が自分の肩と合わないどころか裾は私の足首を超え、ギリギリ床に着くかつかないか。袖なんて切ってしまおうかと思ったほど長いのだ
私はクローゼットから出て玄関で待つ葛葉の元へ駆けた

「ん、さんきゅ」