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なんだ、名前まであいつとそっくりなのか
かのう、叶
髪色に髪質、瞳の色、泣きぼくろの位置まで同じだというのに、苗字まで同類とは。どんな運命だよ
「…？」
俺から溢れた笑みに嘉納はいったいなんだ、といった様子で頭の上にクエスチョンマークを浮かべる
「いやなんでもねぇ、嘉納な、覚えたわ」
嘉納
俺がそう口にした途端、嘉納は眉をひそめた
「…嘉納より、はるが良い」
嫌だ、と言いかけた
何が好きでわざわざ下の名前で呼ばなければならないのか、そこまで親しい仲でもないのに恥ずかしい、と断るところだった
目の前の女の、なんともいえない、むしろ感情がないと言った方が近しいような表情を見るまでは
「…はぁ？わがままかよ」
「わがままでいいの、はるがいい」
絞り出したのは肯定でも否定でもない言葉
しかし女はその言葉を華麗に躱してしまう
突然、なんなんだ
今の今まで笑ってたくせに
この1週間そんな顔は1度もしなかったのに
「親と…仲悪いの。ちょっとした、反抗なの。お願い」
はるは先程の俺の苦笑いを真似るようにして笑う
「…別にいいけど」
「ありがとう…って呼んでくれるじゃないの？」
「は？用もないのに呼ばねえよ」
了承の言葉を口にするしか他に選択の余地は存在しなかった
えぇー、いいじゃんかケチ
唇を尖らせたはるの顔には既に先ほどのような雰囲気はカケラも残っていない
「ていうか、これから一緒にいることになるのに苗字呼びとか距離あっていやだし」
そこまで考えた俺の耳に飛び込んできたのは驚くべき言葉。今度は、俺がクエスチョンマークを飛ばす番だった
一緒にいる？
これから？
こいつは何を言っている？
俺の体はもう犬でないわけで、俺がここに居続ける理由は少しだけ芽生えてしまった情以外には存在しない
しかしそんな思考もはるの言葉によって停止した
「何驚いた顔してるの…だって、1人でいる時に突然犬になったらどうするの？もし人間に戻ろうとしてもその方法がキスじゃどうしようもないよ？」
確かにいう通りだった
俺は1人暮らしである上に突然部屋に突撃してくるような友人だっていない
いや、いきなり凸ってくるやつは1人いるけど、叶に面倒かけるのはそれこそまっぴらごめんだ
とすると、俺は必然的に目の前のこいつに世話になるしかないのだ
「…よろしくはる」
「へへ、よろしくね葛葉」
はるは今度こそ本当に嬉しそうな笑みを顔いっぱいに浮かべた
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作者名：でん太郎
| 作成日時：2022年10月8日 20時
