ポメラニアン、拾いました。 (ページ15)

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気まずい

非常に気まずい

広いリビングのど真ん中

俺と女は向き合って座っている

あのあと、俺が実は犬ではないこと、何故か犬になってしまい気付けばあの路地にいたこと、戻る方法がわからず困っていたこと、何故このタイミングで戻ったのかわからないことを伝えた俺は女にソファに座れと促され、従った

しかし女は甘栗色の髪の毛が顔にかかっているのに、それを退けようともせず、眉を寄せ何か考え込むようにして一言も話そうとはしない

いや、何かではないだろう

飼い犬が突然人型になったことを、だろう

リビングに流れる沈黙

コミュ障の俺と何を話そうとしない女

この2人で一体どうしたら話が進展するというのだろうか

「…つまり、」

沈黙の中に浮いた小さな声に俺は勢いよく顔を上げる

「くずは、さんはもともと人間で、何故か犬になって困っていたところを私に拾われた、って事？ですか？」

女は、俺の目を決して離さないと言うように見つめ、そう言った

俺が人型になったからだろう
話し方も表情もずいぶん硬いものになっている

そんな女に俺は居心地の悪さを感じ、思わず目を逸らしながら口を開く

「…っすね、そういう、ことです」

俺の口から出てきたのは情けない掠れた声

そうだった、こいつは人で俺は人と話すのが苦手

いくら一緒に住んでいたからといってもその間俺は犬であったのだ

「今のタイミングで元に戻った理由は全くわからない…？」

「っす」

俺の掠れた肯定の返事に女は「なるほど」と頷くとスッと立ち上がった

何をするのか、と見ていれば女は着ていたコートを脱ぎハンガーにかけ、肩にかけたままであったバッグを棚の上置いてから、また元座っていた俺の前のソファは腰を下ろす

「ぅぇ、と、大学の方は、いいんすか…」

女は出かける前、大学に用があるといっていた

しかし今の行動は出かけるのをやめたということ

多分、俺のために

「…うーん、飼い犬だと思っていたポメラニアンが突然人になって、しかも元々は人間だった、これ以上に大切なことってありますかね？」

そんな俺の疑問に女は大きな目を瞬かせたあと、首を傾げてそういった

「ぃ、や、わかんない、す」

「んふふ、大丈夫ですよ。大学への用事は教授にデザインの案出しを手伝ってほしいって言われてただけなので。心配してくれてありがとうございます」

それは、かなり大切なのでは？

そう思いはしたが本人が大丈夫と言うのだ。それを信じなければ