キミを拉致せよ、一月九日。 (ページ7)

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六日ページ7

「…じゃあ、これからよろしくお願いします…」
「はい、よろしくお願いします」

深々と頭を下げそう言い合う俺たち
あのあとこれからのことや堤さんの話せる限りの事情などを話し決まったことは大きく三つ

・食事は基本的に各自でとる、堤さんも俺の家の冷蔵庫にあるものは遠慮せずに使っていい
・出かける時は大まかな内容と行き先を伝えること
・俺の部屋に唐辛子を模した木製のプレートがかかっている時はできるだけ静かにしてほしい

他にも洗濯は一日交代で自分のものは自分で洗う、だとか配信中に出かけなければ行けない時はメモを残していく、だとか細かいことはたくさんあったが大きいのはこの三つ

配信をしているということは遠回しに伝えたが堤さんはその手のことにはあまり詳しくないようで「そうなんですね、…わかりました」と首を傾げながら言われた

わかってなくない？？？なんて思ったけどその顔が割とかわいかったのと理解されて「ネット配信者なんて」と引かれても嫌だから黙っておく

「それじゃあ、あとは自由にしてもらって…」
「ぁ、ありがとうございます…」

全て話終わったよな、と頭の中で確認してからそう言えば堤さんはもう一度頭を下げてから話の中で俺が指定した部屋にスーツケースを持って消えていった
部屋の扉を閉める前にも一度俺を振り返ってお辞儀をする姿に「やっぱりかなり律儀な人だよな」と改めて思う
扉が完全に閉まりリビングにいるのは俺一人になったのを確認してから俺は全身の力を抜いて椅子の背もたれに寄りかかった

「…壮絶」

堤さんの過去を聞いてまず思ったのはこれだった
失礼にも詳しい事情を聞いてもいいか、と問うた時堤さんは「あ、全然話せます、けど三枝、さんは話しても大丈夫ですか…？」なんて確認をとってから話し始めた
俺が大丈夫ってどういうことだろうか、ととりあえず大丈夫だと答えた俺はその事を若干後悔している

小学生の頃に父親を交通事故で無くし母親と6つ年の離れた姉との3人暮らし
大変ながらも慎ましく暮らしていたが堤さんが高校を卒業するのと同時に母親が癌で長期入院の末死亡。その時にかかった費用は半分にして借金をしたが中々返し終えることが出来ず
姉は自我が強く堤さんとは相性が悪かったようで母親が亡くなってからは言葉を交わしたのは数える程、今は居場所は愚か連絡先すら知らないらしい
親戚同士の仲もいい訳では無いらしく頼れる人がいない中1人で高卒で働き少しずつ借金を返す生活