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「Aかわいいー！！」
「りりむちゃんもかわいいね」
「何イチャついとんねん、そろそろ開幕やではよ外出ぇ！」
「樋口さん気合い入ってる〜」
教室の一角に作られた調理場兼休憩場から外を覗けば、確かに既に午前中に空き時間のある生徒と早くから来ている外部の人たちがスタンバイしている。
「う〜ん、やっぱりちょっと恥ずかしいなこれ、」
「何言ってるのAはりりむの次にかわいー！でしょ！」
「え、じゃありりむちゃんは私の次ね」
「え！？Aがりりむの次なのに？」
「うんみんな樋口さんの次にかわいい」
「はぁ！？」
ふわふわと膝上で揺れるレース付きのスカートをつまめばりらむちゃんとの精髄反射祭りがスタートしてしまって、巻き込まれた樋口さんが驚いたように声を上げた。
でも、実際スカートの丈がやたら短いこのスカート、というかいわゆるメイド服と呼ばれるリボンだらけのこの服は、少し恥ずかしい。足はスースーするし胸元が開けているから寒い。うん、恥ずかしいよりも寒いかもしれない。
「っ9時！！9時ー！！開幕でーす!！！」
チャイムとともに、廊下から声が聞こえて、教室のドアが開かれる。と同時にたくさんの人が流れ込んできて、私とりりむちゃん、それから午前中シフトの子たちも急いで持ち場へとついた。
「っおかえりなさいませ！」
今日初めて、恥ずかしいその言葉を言ったら、仕事の始まりだ。
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「おかえりなさいませー、どちらの席になさいますか？はい、ではこちらへ。ご注文お聞きします〜」
「Aちゃん、もっとかわいく、かわいこぶって、ラーメン屋じゃないんだよここ、」
「ラブラブパンケーキ、かしこまりましたー、ただいまおもちいたしますね〜」
「Aちゃん！！！」
もう、いいんじゃないかな。9時から13時までのシフトはもう3時間が過ぎて、残すところ1時間。途絶えることのない客足に、私を含むあまりもの希望でメイドになった子たちの声が死に始める。
りりむちゃんは、
「おかえりなさいませーっ！お席案内するねっ、ご注文はー、え？まってそれ売り切れかも、聞いてきますー」
うーん、なんとか。
それもそのはず、絶え間なくやってくるお客さんと、キッチンと、広告塔として15分交代で校内を高いヒールで歩き回り、正直もうみんなヘトヘトだった。
それでも、お客さんにそんなことは関係なくて、
「Aちゃんお客さんー！」
「はーい！」
出迎えなければ、と入り口に走った私はそこでビタッと動きを止めた。
「…おかあ、さん」
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作者名：でん太郎
| 作成日時：2022年10月2日 17時
