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「今日、お母さんと話してみようと思う」

高校生って、中々偉いんじゃないか。朝早くに起きて電車に乗って、学校に行く。学校に行ったら勉強をして、部活をして帰る。それの繰り返し。たまにテストや大会があったりもして、その中にはいわゆる青春と呼ばれるものが合間合間に挟まってくるから、忙しさはその代償だろうか。
朝の冷たい風の中そんなことを考えていれば、隣を歩いていたAさんがはっきりと、そう言った。

「大丈夫そう?」
「わかんない、けど、昨日少しだけ、大丈夫かもって思えることがあって」

刀也くんのおかげ、ありがとう。なんてはにかむようにしてお礼を言うAさん。
特別、何かをしたわけでもなく強いて言うなら話を聞いたくらいで、でもまぁAさんが僕のおかげと思っているならそれでもいいか。

「力になれたならよかった」
「うん、あ、あのね、お母さんを文化祭に呼ぼうかなって思ってて、」
「へぇ、…あ、僕のこと紹介してみます?」
「あははっお互いの利益のために付き合ってますって?びっくりだよ」

Aさんはきゃらきゃらと笑って、それからふぅと一息ついた。

「でも、いいかもね」
「え?」
「こんな変な関係も、中々無いし、刀也くんにはなんだかんだお世話になってるし、一緒にいるの楽しいし、

どうする?彼氏ですって、紹介してみる?」

かわいいと言われる子は、みんなこうなんだろうか。悪戯っぽく下瞼を引き上げて薄く色のついた唇の端をにっと歪めて。細くて長い黒髪が朝の光を反射したりして。なんて魅力的。

「…いいですよ。仲良くしてますって、肩でも抱いてみようか」

かなうかかなわないか。彼女の真似をして笑ってみれば、Aさんは少し驚いたように目を瞬かせた。

「かっこいい人って、なんかずるいね」

え、なんて声を上げる前に、Aさんが言葉を続ける。

「びっくりした。そんな顔できるんだ」
「どういう、」
「なんか、少女漫画に出てくるドS系の顔してたよ」
「…それあんまり嬉しくないな」
「うそ褒めたつもりなのに」
「褒め言葉って、辞書で引いた方がいいですよ」
「えーひどい」

Aさんが、いいことがあったっていうのは本当なんだろうな。彼女のまとう雰囲気が随分と、軽くなっている。楽しそうに笑う顔は前よりも大きい。

かっこいい、なんて言われてうるさくなった心臓に対抗して、冷静ぶってみたり。

「まぁ、気が向いたらどうぞ」
「あはは、こちらこそ」

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作者名:でん太郎 | 作成日時:2022年10月2日 17時

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