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あぁ、りりむちゃん。私よりもフタバの新作が大事ですか…?
「Aさん、どうしました?」
全ての授業を終えて華の放課後、C組を訪ねれば誰に用があるとも言っていないのにまるで当たり前というように刀也くんを呼ばれてしまった。いや間違ってはないんだけど。
「その…ちょっと、謝りたいことが、あって」
「おぉ、なんですか?」
「その……」
「はい」
あぁどうしよう反応が怖すぎて言い出せない。普通に考えて勝手に自分の体育着使われたら引くだろう、むり、刀也くんの蔑みの目とか、ほんとむり。想像しただけでも怖い。
ほんと、どうしました?大丈夫ですか?なんて、優しくするのはやめてほしい。今から言う事に、あなた絶対引くでしょう。
がんばれA、なんでもないふうに、いつも通りで…
「あれ、それ、僕の体育着袋…?」
「っひぃ」
「どこかに落ちてました?すみません、拾ってくれたんですね」
「えっいや、あの」
「実は昼休みから見当たらなくって、助かりました」
「ちっ、ちが…!」
「いやぁ、失くしたかと思って焦ってたんですよ」と手を伸ばしてくる刀也くんに、思わず後ずさる。
「あれ、どうしました?」
「えっ、と…」
「なにか、困り事でも?」
「こ、困りごとといえば確かにそうなんだけど…」
「まさか誰かがそれに悪戯してもう着れない状態とか、」
「そんな事は断じて!」
「あぁじゃ問題ないですね」
いけないこのままじゃ押し負けてしまう…!
もういっそ本当に拾ったことにしてしまう…?いやだめだもう着てしまった。出来るだけ汗はかかないようなしたけど普通に着てしまった。
…洗って、洗って返そう。一度持ち帰らせてもらおう。そうだそれがいい。その方が謝りやすくなる気がする、多分。
「今日、部活でジャージ使うんですよ」
ジーザス、神よなぜ私をお見捨てになられた!
あぁもうおわりだ…自分でもわかるほど勢いよく血の気が引いていき、背筋が冷たくなる。
腹を括らねば…と、恐る恐る体育着袋を差し出し、頭を下げる。
「ご、ごめん、色々あったとはいえ、刀也くんの体育着、勝手に着てしまいました…」
ぎゅうと目を瞑り出来るだけ頭を低く。しかし、刀也くんは何も言わない。うんとも、すんとも。
やはり怒らせてしまった…?と薄目で刀也くんを見てみれば
「…な、なんで笑って…」
「んふ、ふふ、Aさんが、必死なのがかわいくって、ふふふ」
口元に手を添え喉を鳴らすように笑う彼に、私は頭に疑問符を浮かべた。
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作者名:でん太郎 | 作成日時:2022年10月2日 17時