嘘つきカップル (ページ30)

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「あなたは家の重荷をわかってないの！！」
「家の重荷よりも子どもだろ！？結局は自分のことしか考えられないのかよ！」
「そんなことない！！けど！！！」
「けどなんだよ、なんだよ！？(名)のこと考えてやれよ！！！！」
「もうやめてよ…！！」

私が私立の大学附属なんて仰々しい名を背負った小学校に通っていた頃、そんな両親の口喧嘩を良く聞いた。

母の家系は、いわゆる地主の家系だった。由緒正しいくて、厳しくて、それを誇りにしているような家系。
小さい頃から良く法事とか、お祭りの中枢とか、参加していたのは多分それで。
それとは反対に、父は田舎の出だった。暴走族とか、チンピラとか、そういうのがたくさんいるような本当に田舎。父はとても優しかったけど、父の地元は少し怖かった。

そんな正反対の両親だったから、どうしても時を重ねるごとに噛み合わない部分が増えて行ったんだろうと、そう思う。

2人の喧嘩を聞かなくなったのは3年生の後半だったか。ふっつりと糸を絶ったみたいに2人から会話が消えた。言葉を交わすことが無くなった。
そして、四年生に上がると同時に私は公立の、制服なんて、言葉遣いの矯正なんて存在しない小学校に編入した。そこで今まで普通だと思っていたことは普通ではなかったと知った。公立の小学校に通う子たちは休み時間があると言った。2時間目の終わりと昼休みは校庭に出て鬼ごっこをするんだと言った。
なにそれ、私、今まで勉強しかしてこなかったよ
そう返せば変なの！なんて笑われた。

「やっぱり公立の子はレベルが低いわね」

母が言った。私が初めてできた親友を家に連れてきた時だった。そのとき、生まれてはじめて怒りを知った。この人が、嫌いだ。明確に嫌悪感を抱いた。けど、表には出さなかった。父が、教えてくれたから。

「腹が立つ時、悲しい時、それを相手にぶつけちゃいけない。もしも我慢できない時は、僕に言いなさい。なんでも受け止めるよ」

話すと父は長い顔をした後に「あの人は仕方ない人だから、そう、育てられた人だから」と悲しそうに笑った。
そうやって、厳しい言葉と態度を貫く母と全てを諦めたように、ただ私には底なしに甘い父と。

私は圧倒的に父親っ子で、何かあるたびに父を頼り、父を尊敬していた。しなしそんな態度が母は気に食わなかったらしい。今思えば、教育を施しているのは母だったわけだから、当たり前の反応かもしれない。

そんな2人と暮らしたのは12年間。中1の春までだった。