嘘つきカップル (ページ17)

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"クラス企画、何になりました？"

"りりむちゃんの頑張りによりメイド喫茶に決定"

"じゃあAさんもメイドですか？"

"私はあまりもの希望。りりむちゃんはメイドで樋口さんは裏方だって"

"でろーんさんがメイドは少しキツ…"

"樋口さんに見せました"

"でろーんさんがメイドは少しキツツキも喜んでしまうでしょうね"

"うそだよ。君、誤魔化すの下手だよね"

「ふふ、」
「げ、」

僕のこぼした笑みに伏見ガクは僕から距離を取ろうとし、失敗した。

「ちょちょちょとやさんギブギブヘッドロックやめて」
「なぁにが「げ、」だよ逃げるな僕から」
「い、いやぁ、だってとやさん惚気始めたら長いんだよぉ」
「別に、毎回事細かに話したりしませんよ」

けっ、と目の前の男に冷たいつもりの視線を投げつけ、視線を携帯へと戻す。

Aさんはメールだと少し砕けた印象がある。そして、返信がかなり早い。それは授業中であろうと夜中であろうとあまり変わらない。付き合って連絡先を交換した後に気がついた事だった。

とは言っても、契約上の彼氏彼女である僕らは頻繁にやり取りをするわけでもなく、小さな話題をたまに、まとめて送り合うのが現状だ。
彼女の違和感のある笑顔に心配が募る中全ての授業を終え、ホームルームも終了した僕はすぐさま携帯に文字を打ち込んだ。

"倒れたりしてませんか？"
いや違うだろう

"元気ですか？"
故郷の母親に送る手紙か

"生きてますか？"
何が目的だ己は

紆余曲折あり結局クラス企画の内容について質問するという平々凡々としたものに落ち着いたメールは、やはり数秒で既読がつき、返信が返ってきた。
リズム良く行き来するメッセージに、思わず笑みがこぼれる。いやちがう。本来の目的はこれじゃない。彼女から様子がおかしい原因を引き出す事。僕が自分に課したミッションだった。

無理に引き出そうなんてそんな事は望んでいない。彼女からその一欠片でも拾い上げて、そして願わくば解決の糸口を。それを、掴めたなら。
彼女の顔から鬱々とした影が消えて無くなるまで。笑顔が戻るまで。

"今日部活ないんですけど一緒に帰れますか？もし帰れるならA組まで迎えに行きます"

メッセージには、ものの数秒で既読がついた。

"帰れるよ。ありがとう、待ってます"

即時、鞄を引っ掴み教室を出る。背中にガクくんの慌てたような「ばいばい」が聞こえた。