♭君への子守唄 ページ8
『えっと……』
早くしろと言わんばかりの目で見てくる四人。
クッソ恥ずかしい……。
渋々歌うが……生憎、子守唄なんて憶えちゃいないため、適当に思いついた言葉をメロディーに乗せる。
ふと思い出した曲だ。
歌詞なんて一つも憶えちゃいないけど、
何故だかこの歌を思い出す時、僕は酷く泣きたくなる。
『一つの夢をみて 君だけの夢を……』
歌い終わると、目の前の四人は何とも言えない顔付きをしていた。
「「「「………」」」」
『なんですか。何か文句でも？』
ジロリと見ると、溜息を吐かれた。
「いやぁ、やっぱりお前さ……」
「歌詞は悪くないんだけどなぁ……」
「肝心の歌声がな……」
「あぁ、残念だな……」
青筋が額に浮かんで頬が引き攣る。
『あっ……そーですか！！
別にアンタ達のために聴かせたわけじゃないんで！！！
そんなこと言われようが？別に？！何とも思いませんけど？！！！』
「まぁそう怒るなA」
お頭が僕の頭を撫でる。
肩震えてるし……笑ってんのバレてんだからな。
『は？怒ってませんけど？？』
「怒ってんじゃねェか」
「やめろやめろ、お前等！ウタの前だぞ」
ハッとして腕の中のウタを見る。
そもそも僕はウタを寝付かせるために苦手な歌を歌ったのだ。
『ね、寝てる……？』
良かった……。
僕の、歌とも呼べないようなアレじゃあウタを泣かせるんじゃないかとヒヤヒヤしたが、どうやら杞憂だったらしい。
「でかしたぞ、A！！」
お頭が喜んだ拍子に、寝酒に飲んでいた酒瓶から手を離した。
「あ」
「っおい！」
『嘘だろ…？』
「あぁ〜！！！」
パリィン……！
「ふぇ…グスッ………うわあぁぁああん！！！」
「「「『何してんだお頭！！！』」」」
……こうして、
「いやぁ、昨日は悪かったな」
────それでも、こうやって笑うお頭は憎めない。
本当に得な人だ。
でも、きっとこれはこの船に乗る全員がそうだと思う。
この人の何かしらに憧れ、惹かれ、尊敬して慕っているのだから。
『はぁ……これからはウタの寝かし付けは当番制にしましょう。
流石に、いち海賊団の船長がずっと寝不足ってのはいかがなものかと思うので……戦えなくなっても困りますし。』
まぁ、そんなことを素直に言える性分ではないので悪態をついて誤魔化した。
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作者名：凍ったライム | 作成日時：2022年10月1日 0時
