♭君と眠れない夜 ページ7
翌日。
ウタが来てから二日目の朝。
僕、お頭、副船長、ヤソップさん、ホンゴウさんというメンバーは目の下にくっきりと隈を作っていた。
慣れない環境だったからなのか、はたまた赤ん坊とはそういうものなのか。
所謂、夜泣きというヤツだ。
他の奴らは宴だったからかグースカ寝ていて、偶然起きていた僕達に夜泣きをあやすお鉢が回ってきたという訳だ。
不寝番をしていた副船長とヤソップさん、
二日酔いになる人達が出ることを見越して薬を用意していたホンゴウさん、
そして明日に備え少し片付け──どうせみんなやりたがらないので結局僕がやることになる──をしていた僕が彼女の壮絶な泣き声に気付いた。
そうして、自分は親だと宣言したお頭を叩き起こしウタのご機嫌を伺う。
「どうしたらいいんだ？！！」
おしめを替えたり、ミルクを作ったり……
やっと寝付いたと思って横にさせるとすぐにまた泣き出してしまう。
『ちょっ……ヤソップさん、アンタ子どもいましたよね？
こういう時どうしてたんですか』
この中で唯一子持ちのヤソップさんに訊くも、彼は目を逸らす。
「いやぁ……子どもの世話は全部奥さんに任せっきりだったからよ……」
『駄目じゃないですか！』
「すまん……」
いや、謝る相手は僕ではなく奥さんと息子さんだろう。
まぁ、ヤソップさん自身の問題なので首は突っ込まないでおくのだが……
問題は、今この状況を打開する策が無いこと。
お頭がウタを抱え、副船長が器用にタオルを使って兎の形を作った。
ホンゴウさんは白湯を用意している。
因みに、コレは僕が悪いのだが、ヤソップさんはまだ少し落ち込んでいる。
『あ、』
ふと思い出す。
確か、ウタが笑ったのは────
『子守唄……？』
ポツリと呟いた。
お頭達は顔を見合わせ、
「「「それだ！！！」」」
あまりの期待に、軽率に言ってしまったことをちょっとだけ後悔した。
『いや、分かんないですよ？！
ただ、試す価値はあるかもって思っただけで……！』
慌ててそう言うが、お頭はやる気満々だ。
「いや、やってみよう！
ほ〜らウタ〜！！！良い子だから〜ねんねしましょうね〜」
「音痴か！！」
「昼のやつと歌詞が違ぇ」
「泣き止まねぇな」
「だ〜ッッ！うるせえ！！
じゃあお前等がやってみろよ！」
そう言って回ってきたのは僕。
……何故。
『僕歌下手なんですけど。子守唄なんて無理です』
「頑張れよ、A！」
『他人事だと思って……』
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作者名：凍ったライム | 作成日時：2022年10月1日 0時
