【OP】『僕は君の先生ですから』【男主】 (ページ6)

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♭君の名は“ウタ” ページ6

『でもこの子は、』

『いつかこの船の音楽家になるかもしれませんね』

僕は誰にともなく、そう言った。

「そうだな。」

お頭はそっと赤ん坊の頭を撫でる。

その顔は誰が何と言おうと親の顔だった。

「……よし、決めた。」

「お前は今日から“ウタ”だ！！！」

お頭は赤ん坊───ウタを抱き上げて仲間全員に届くよう、高らかに宣言した。

昼間からみんなでどんな名前にするか悩んだが、どれもしっくりくるものがなかった。

だが、この名は───“ウタ”という名は、この子に相応しい名だと僕の直感は言っている。

それに、この場にいる誰も異論を唱えない。

きっとみんなが僕と同じ気持ちなのだろう。

これ以上の名はないに違いない。

例えこの子が音楽家にならなかったとしても、だ。

音楽家でも船医でも航海士でも何でもいい。

戦闘員には……あまりなってほしくないけれど。

「「『ウタ、ようこそ赤髪海賊団へ！！！』」」

ただウタが楽しく、毎日を心から笑って過ごしてくれれば、それでいい。

だから、心からの歓迎を君に。

『よろしくね、ウタ』

────僕はこの日を永遠に忘れないだろう。

君と出会ったこの日は、僕の中では赤髪海賊団に出逢った日と同じくらい大切な日になったんだ。

『あの、』

僕ははしゃぐ仲間達に声を掛ける。

視線が集まる中、平静を装って言葉を紡ぐ。

『この子……ウタは多分、2歳くらいだと言ってましたよね。』

ホンゴウさんに聞いた情報をもう一度確認する。

『でも、年齢が分かっても誕生日までは判りませんよね。』

ここまで言えば、きっと彼等も僕が何を言いたいのか分かったんじゃないだろうか。

『今日、10月1日をウタの誕生日にしませんか』

真っ直ぐお頭を見つめる。

この子の親はお頭だから。

───誕生日は大事だと思う。

赤髪海賊団にウタという船員(クルー)が誕生した。

本当の誕生日は判らなくても、きっと今日この日も、僕達や彼女にとっての記念すべき日だから。

「確かに、それがいい。
10月1日、この日はこれからウタの誕生日だ！！」

「「「ウオオォォオオオ！！！！」」」

みんなが歓声をあげる。

10月1日。

この日僕達は新しい仲間ウタを迎え、これからも果てしない海を進み続ける。

僕達と一緒に笑うウタを見て、

───彼女がこの船を降りたいと望むその日まで、永遠に一緒にいたい───

そう思わずにはいられなかった。

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