【OP】『僕は君の先生ですから』【男主】 (ページ15)

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♭君と扉一枚とページ15

鳴り響く銃声

耳障りな金属音

人の身体から出ているとは思えないような、殴る、蹴るの応酬

何かが倒れる音

獣の本能を剥き出しにした咆哮

呻き声、悲鳴、罵声、命乞い

潮の匂いを掻き消すような火薬の臭い

噎せ返るような鉄の臭い

弾けた汗の臭い

視界に散る赤

遠く見えたお頭の赤

足元を跳ねる赤

対称的に、頭上を覆う果てしない青

恐ろしいほど凪いだ透明な青

乾いて引き攣った喉に甘いような、酸っぱいような味

それに混じって、錆びた鉄の味

身体を掠める鎌鼬

駆ける身体が切り裂かれた空気を纏う

ビリビリと全身を針で刺されるような殺気

ここは熱気が渦巻いている

そして、手にした確かな質量はほんの僅かな動作でいとも容易く、相手の息の根を止めるだろう

───戦場では殊更、五感が鋭くなる気がする。

この感覚は、嫌いだ。

相手は最近話題のルーキーで、お頭の首を取って名を挙げることが狙いだそうだ。

まったく傍迷惑な話だ。

お頭の懸賞金が値上がりしてからというもの、こういった輩が増えていけない。

自らの船長の実力が認められていると思えば悪い気はしないが、戦闘が増えるのはいただけない。

なにより、こちらにはまだ幼い子どももいるというのに。

(そんなこと言っても仕方ないことは分かっているんですけどね……)

死にたくない。

殺したくない。

そんなことを考えるのは命取りだ。

ただひたすらに己が誓った海賊旗に恥じないよう、僕等は戦う。

「クソ……なんだコイツ！
ヒョロヒョロしていやがるくせに……！！」

「弾が当たらねェ……！」

『お褒めいただき光栄ですね』

「舐めやがって……！」

申し訳ないが、自分を殺そうとする奴相手に素直に死んでやるほど僕はマヌケじゃない。

物理的、精神的な攻撃どちらも駆使して応戦する。

ふと鮮明な視界の隅で不審な影を見た。

赤髪海賊団のクルーじゃない。

そいつは今にもレッド・フォースの船内へ続く戸を蹴破ろうとしていた。

戦いで酸欠になった頭に過る。

(そこには、今───)

『ウタ…』

いくつもの荒波を越えてきた。

やわな船じゃない。

この船の船大工は優秀で、あの扉だって何度も補修されている。

それにウタの傍にはホンゴウさんもいる。

僕よりも断然強いし戦歴だって長い。

信頼できる。

彼がいる限りウタは安全だ。

────だけど。

万が一、もしウタに何かあったら？

怪我をしたら？

本当に最悪の結果になってしまったら？