脚色 Ⅱ (ページ36)

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亮平は震える手で慌てながらも写真立てを手に取った
押さえ部分をズラし、カバーガラスを外してゆく。兄と二人で撮った高校の入学式の写真、その裏にはSDカードが貼られていたのだ

勿論、亮平はそんな物を仕込んだ覚えはない。そして先程の兄のメモ、これは兄が亮平に向けて仕込んだものであった
急いで鞄からPCを取り出し、SDカードを読み取らせる。そこには一つの動画が内蔵されていた。カーソルを動かし、亮平は食い入るようにPC画面を見詰める

　『、亮平』
ab「ｯ、兄貴！」
　『まず始めに、この動画を観ているなら大学受験は受かったんだな？おめでとう』

兄は変わらぬ姿で昔のような笑みを浮かべている。久しく見ることのなかった兄の笑顔に亮平は涙が零れそうになる。そんな亮平を他所に画面の中の兄は言葉を続けた

　『そして、俺は死んでいるんだろうな』
ab「っ！！」
　『だけどな、亮平？お前は悪くないんだ』
ab「、へっ…？」

兄の優しい表情と言葉に、亮平は困惑を示した。俺のせいではない？でも、兄は俺への劣等感のせいで、！そう思う亮平をなだめるかのように兄は口を開く

　『俺は自害したわけじゃない、殺されるんだ』
ab「ころ、さ…れ？」
　『、俺達の両親にな』

その言葉に堪えていた涙が溢れ出した
可笑しな点は沢山あった。両親ともども殺されたというのに綺麗なままのリビング、少ない数の斑点、自害した兄の遺書の不提示。更に言えば、亮平は両親の死体も兄の死体も拝んでいないということ

ab「ぁ、っ、ぁ…」
　『騙せれるな亮平。父さんと母さんは偽物だ、悪魔だ。あいつらは幼い頃に俺達の本当の両親を殺している。何処かの研究所の職員だ』
ab「そ、な…ｯ」
　『俺はその証拠を集めるために引き籠った。でももうバレるだろう。殺される…いや、それも実験の一環なのかもな…異能力者(ジゼル)を生み出すための』
ab「あにき、あにきっ…！」
　『いいか亮平？お前は自慢の可愛い弟だ。…信じる者は自分で決めろ、運命に抗え！分かったな…？ごめんな、お前の成人式…祝えなくて』

兄の動画はそこで終了している。悲し気な笑みを浮かべた兄を見て、亮平は真に誰が自分を裏切ったのかを悟った。PC画面には何やらURLが浮かんでおり、それを読み取ろうとしたところで部屋の扉がけたたましく叩かれる

ab「っ、」

亮平は急いでSDカードをPCから抜き取り、自分のポケットの中へと隠す。その直後、叩かれていた扉は凄まじい音と共に破壊されてしまった