脚色 Ⅱ (ページ26)

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目黒がそう言うと、岩本とラウールの影が蠢き二人の足に絡みつく。咄嗟に逃げようとしたが一歩遅かったのだ。向井はそんな二人を見て砂時計を回そうとしたが、それを横目で見た目黒が触手を動かし、向井の両腕を触手で纏め上げる。これでは向井も砂時計を操作することが出来なかった

iw「ｯ、！」
mm「安易にチェックメイトしちゃダメでしょ…馬鹿だなぁ」
sk「みんなを、離せッ!!」

唯一身動きの取れる佐久間は、自身に【人体解剖(アナトミー)】をかけて身体強化を施し、目黒に蹴り込む。だが、それも虚しく目黒の触手に受け止められては足に影が纏わりつき、宙づりにされてしまった

mm「邪魔すんな、よッ!!」
sk「がッ!?」
ru「ッ、!!」

目黒は苛立ったのか、宙づりの佐久間の顔面を蹴り飛ばす。ぽたぽた、と佐久間の口端と額から血が滴り落ちてゆく。それを見た目黒は満足そうにすると、「チェックメイト」と呟いた

▼▽▼

その最中、離れた場所では宮舘と渡辺が交戦を繰り広げている。氷の銃剣に対して宮舘の武器は蛇腹剣。近距離も遠距離も対応可能な二人の戦いはほぼ互角

dt「ちがう、ッ!!《お前は翔太じゃない！》」
nb「うるせぇっ、!!俺は翔太だ！」
dt「っ、…」

暗い、黒い宮舘の瞳には動揺と混乱、恐怖が映っていた。もし、もし本当に彼が渡辺だとすれば、今まで彼のためだと思ってやってきたことは、自分は、間違っていたのだと、そう認めることになる。それが宮舘は怖かった

dt「違う違う違うッ!!《俺は間違ってない！》」
nb「間違ってんだろ!!お前は今まで何見てきたんだ！涼太!!」

迷いのある宮舘の剣を渡辺の銃剣が弾き飛ばす。その剣は氷の百合畑に突き刺さった。宮舘は自分の顔を抑えながら、泣きながら否定し続けた

dt「ちがう、ちがうッ、それじゃぁ」
nb「涼太…？」
dt「俺がｯ、俺が命令したせいでｯ、俺のせいで!!!!」
nb「ッ!!」

その瞬間、乾いた音がその場に響き渡る。渡辺が宮舘の頬を思いきり叩いたのだ
彼の行動に宮舘は目を見開いた

nb「っ、正気に戻れよッ」
dt「しょ、た…、？」
nb「なんでいつもお前はそうなんだよ、ッ」

渡辺は同じように泣きながら彼を抱きしめる。じわりと宮舘の瞳には赤が滲んだ

nb「なんでッ、なんで俺には、ッ…お前を、守らせて、くれないんだよｯ」
dt「っ、」
nb「もう守んなくていいよ、傷付かなくていいよ、だからっ…戻って来てよ、涼太ぁっ、」

宮舘の虚ろな瞳から、涙が溢れた

dt「しょ、ぅ…たッ」