脚色 Ⅱ (ページ17)

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川島の三味線の音色が鳴ったと共に、時間停止が解除される。桜の花びらは再度散り始め心地よい風がその場に居た全員の頬に触れる
憂いを帯びた表情を浮かべる川島は、座っていた枝の上に立ち上がり

ne「神様が寂しがるので俺は此処でお暇させて頂きます」

そう呟き、ソメイヨシノから飛び降りようとする
しかし、その寸前

ne「…あぁ、それから追伸です。『貴方がたを狙う人たちとの交戦は免れないでしょう。少なくとも数日の内に、バンコクを巻き込んで大騒動が起きます』とのことです」

川島はそれだけを言い残して飛び降りた。地面に着く前にその身体は桜吹雪と共に消え去ってゆく
今起こった現状を理解するのに、三人は少し時間を掛けて脳を動かした

sk「交戦、って…」
nb「…ふっか？」

渡辺が隣を見遣ると、深澤の顔色が随分と悪くなっていた。汗を掻いていて、唇を震わせている。声掛けにも反応を示さないため、渡辺は更に心配になった

nb「おい、ふっか大丈夫か？」
fk「ｯ、だい、じょぉぶ…」

浅く呼吸をしながら深澤はこくりと頷いた。「ちょっと体冷えちゃったかも…」と言うと、にへらっと苦笑いをしてみせる。そんな彼に渡辺は早く風呂に入るように促して、佐久間の元に向かった

nb「佐久間、なんともないか？」
sk「俺は特になんとも…ふっか大丈夫そう？」
nb「寒いみたいで顔色悪かったから風呂行かせた」
sk「そう…、ねぇ、翔太」

ソメイヨシノを見ながら佐久間は先程の川島の言葉に抱いた疑問を渡辺にぶつける

sk「“何度も見てきた”…ってどういう意味だろうね」
nb「それは…俺にも分からない」

その疑問は渡辺も感じていた。彼の言葉にあった違和感、そして…火災発生時に感じた妙な感覚。川島の言葉を酌むと、もしや、という考えに至るがそれはあり得ないだろうと渡辺は左右に首を振って、考えを霧散させる

sk「…あ、ふっかの着替え…」
nb「、俺も照たち見てこねぇと」
sk「さっきのこと、照たちに言った方が良いんだよね？」
nb「そうだな」

二人は話し合いながらその場を立ち去る。佐久間は振り向きざまに見た桜の飛花に、見知らぬ風景が重なった。竹のような素材で作られた和風の丸窓、降り注ぐ雪と美しい寒桜、桃色の美しい着物を着ている少年の傍に居るのは＿＿＿＿＿＿＿＿、

nb「＿＿、＿い、おいｯ!!」
sk「んにゃ、っ!?」
nb「大丈夫かよ…ぼーっとしてたけど」
sk「ん？にゃはは、大丈夫でやんすよ～」

今の情景は一体、何だったのだろうか