脚色 Ⅱ (ページ16)

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音にいち早く気が付いた佐久間が真っ先に中庭に向かう
このアジトは阿部の作った魔法陣を主軸にしているため、外部にバレることなんてないはずだ。それなのに、何故、一体だれが、佐久間の脳では考えが答えに辿り着くことなく

sk「っ、ふっかは中に居て!!翔太はふっかの傍に居てっ！」

同じように音を聞いて集まった二人に対して佐久間はそう叫ぶと、縁側から中庭に飛び出る
中庭には、鹿威しや錦鯉のいる池があり、それから蓮の花や石楠花、曼殊沙華が咲いている。その中でも一番目立つのは中央に植わっているソメイヨシノだ

そして、そのソメイヨシノが美しく咲き誇っている太い枝に、真っ黒な着物を着た美しい青年が座っている。その手には三味線があるため、先程の弦の音の正体がハッキリとした

sk「、誰だよ」

佐久間の口から、自分でも驚くほど低い声が出る。恐らく、イレギュラーなことが重なり、苛立っているからだろう
青年はその声に反応して、美しいシャンパンゴールドの長髪を風に靡かせながら佐久間の方を向いた
その瞳を見て、佐久間は息を飲む

ラウールとはまた違う、白銀ではない白、例えるならば、そう…しゃぼん玉のような輝きを持っている
不思議で神秘的な瞳に、吸い込まれそうなほど魅入ってしまう

nb「佐久間ァッ!!」
sk「ぁ、」

渡辺の呼び声が鶴の一声となり、佐久間は意識を浮上させた。そんなやり取りを見て、青年はくすくすと笑ってみせる

　「初めまして」

青年はそう言うと、ﾍﾞｪﾝｯと三味線を弾いてみせた。すると風が止み、散っていたはずの桜の花弁は宙に停止する。この光景は見たことがある。向井の異能力(ギフト)と酷似しているのだ

ne「俺は川島如恵留と申します。警戒はなさらないで下さい、俺は皆さまと争うつもりは御座いません」

丁寧な口調で青年、川島は言葉を続ける

ne「俺は伝言板ですのであまり長居は出来ません、一方的になりますが伝言を伝えさせて頂きます」
sk「は、伝言？誰からの」
ne「…俺達の神様からです。伝言相手ですが、其方にいらっしゃる深澤辰哉さん」
fk「…お、れ？」

川島に指名された深澤は目を見開いて驚く、何故なら彼は川島に見覚えがないのだ

ne「はい。伝言内容ですが『…貴方がこれで最後にしたいというのなら、俺は貴方の手助けとなり、糧となりましょう。貴方達が足掻いてきたのを俺は何度も見てきました。そろそろ報われるべきです』…と、」

川島は抑揚のない言葉で伝言を紡ぐと、また三味線を弾いた