脚色 Ⅱ (ページ15)

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食事を済ませた渡辺達はアジトに戻ろうとしていた。しかし、リーダーである岩本が先にラウールを連れて帰ってしまった為、向井の待遇をどうするか決め兼ねていたのだ

kj「俺はこのままホテルでえぇよ、みっちーも居るし…俺行ったらラウールが怒るやろ」
nb「…随分と物分かりが良いんだな」
kj「それが売りやからな、まぁ…結構煽ったりもしたけど」

そう言って、向井は深澤に向き直り「また明日来てください、ふっかさん」と微笑んで手を握ってみせる。それに深澤も笑い返していた
渡辺も佐久間も、そんな深澤はラウールに対してしか見たことがない。自分たちにはこの数日間向けられたことのないもの。少しだけ、心がざわついた

sk「ほら、ふっか！帰るでやんすよ」
nb「ラウールも拗ねてるだろうしな」
fk「うん、そうだよね…」

「おやすみ、また明日」と向井に告げて、深澤は佐久間と渡辺の手を握り瞬間移動(テレポート)する
そんな三人を見送った向井は笑顔をすとんと落とし、道枝に告げた

kj「るーたくんに頼んどったこと、済んどる？」
mc「済んどりますよ、後は康二くんの自由にしたらえぇって言っとりました」
kj「…めめとふっかさん、俺には二人だけで充分なんよ」

どろりとした液体の入っている砂時計を、ホテルの証明に翳しながら呟く向井。そんな向井のことをいつも通りだと言わんばかりの笑顔で見詰める道枝

彼らが、【WeSt_Side】が何者なのか、何がしたいのかは、まだ明かすには早すぎるかもしれない

▼▽▼

sk「とうちゃぁーくっ、でありまーっす!!」
nb「うるせぇよ、佐久間」

大声で玄関に飛び込む佐久間を、渡辺が叱責する
そんな風景を見て、深澤はなんだか懐かしさを覚えた

fk(…変わんないなぁ)
sk「どうしたのさ、ふっか」
nb「早く入るぞ、」
fk「うん、待ってよぉ」

各々が靴を脱いで丁寧に靴箱に仕舞っては、そのままリビングに向かう。しかし、そこには岩本もラウールも居なかった

nb「寝てんな、これ」
sk「色々あったしねぇ…」
fk「あ、俺だけ風呂入ってない…」
sk「じゃぁ、俺が着替え持っていくからふっか入っちゃいなよ」
fk「ごめん、佐久間」
nb「俺は一回、照の部屋見てくるわ」
sk「りょうかーい」

渡辺は廊下を通り岩本の自室に向かおうとする。深澤は浴室に、佐久間は深澤の部屋に着替えを取りに、

そのとき

nb「…ぁ"、？」
sk「えっ、？」
fk「この、音なに？」

中央の中庭方面から、ﾍﾞｪﾝｯ、と高い弦の音が響いた