脚色 Ⅱ (ページ14)

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黒いワイシャツ、黒いコート、黒いパンツにスカートのようなものを腰に巻いていて、黒いブーツ、黒い手袋に、黒い爪先、漆黒を纏う青年。彼の中にある有彩色といえば肌の色か、目立つピンクベージュの髪色ぐらいだろうか

そんな彼は宮舘にその手を差し出す。宮舘もその好意に甘えて手を借りることにした。立ち上がらせてもらうと、青年はにこりと笑って手を離す

宮舘より少し背が高く、しかし華奢なその身体。少年に近い青年を見てきた宮舘の中で初めての出会いであった

dt「有難う御座います」
　「いえいえ、大丈夫ですか？顔色が悪いですけど…」
dt「…少しだけ、」
　「、あぁ」

青年は宮舘の出てきた部屋を見ては目を細めて、「あべべの部屋から出てきたんですね、お気の毒に。今、作間が呪詛掛けてるからしんどかったでしょう」なんて表情を変えることなく呟いた

それを聞いて、宮舘は驚く。此処に阿部が収容されているのは極一部しか知らない。もしかしら目の前の彼は上層部の人間？と、冷や汗が止まらなかった

しかし、そんな宮舘を見て青年はすぐに訂正を始める

　「身構えないで下さい。俺、職員じゃないので」
dt「えっ？」

じゃぁ、一体？そう疑問を思った瞬間、施設内にけたたましい警報音が鳴り響く。これは管理しているモノが収容違反を起こしたときに鳴るものだ

まずい、早く非難しないと…、

　「…バレたかぁ」
dt「は、」

　『全職員に通告します。オブジェクトクラスKeter、管理コード19950615-【迷い仔の統率者】が脱走しました。職員は直ちに捕縛し、収容してください。繰り返＿＿＿＿＿＿＿、』

ﾊﾞｷｯ、という音を立ててスピーカーが何かに破壊される。視線を其方に向けると、青年の履いているスカートから、何かが、うねって、いて

　「あ、見られてた」
dt「ｯ、」

触手だ。青年のスカートの中からは無数の黒い触手が何本もうねうねと動きながら出てきている。通常の人間なら卒倒するような光景である

　「ちょっとうるさくて…すみません、仕舞いますね」

そう言うと、触手は彼のスカートの中に収束されていく。つまり、彼も人ではないということ。そして、先程流れた放送のオブジェクトとは彼を差していることになる。宮舘も出会ったことがないに決まっている、何故ならクラスが最も危険度の高いKeterなのだから

　「内緒にしていて下さいね、触手出したこと…■■に怒られるから」

青年は笑顔で告げると、足早にその場から立ち去っていく