神様に届かなくても (ページ3)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:295 hit

三話ページ3

カバンを床に置き明日の準備だけすると両親の元へ向かう。
行きたくない気持ちを押し殺して。
今度は何も言わずに寝室に入りベッドの一番すみに腰を掛けた。
ちょうどその下に無造作に置かれたゲーム機を起動させる。
家にいる間はいつもこうだ。
父親の好きなゲームに付き合わなければならない。
自分の時間も出掛けることなど許されない。
逆らったら父親の拳が飛んでくる、もしくは蹴りを入れられる。
臆病な私はソレが怖くて大人しく従っていた。
お母さんも父親に従いゲームをしているが私とは違い乗り気のようだ。
時々、父親を呼んではゲーム画面を見せて楽しそうに話している。
モニター付きのゲームパッドを強く握りしめて、ただただ画面を見つめていた。
ゲームは娯楽だ。
本来は楽しんでやるものだろう。
楽しむために存在するであろう娯楽に毎日苦しめられていると思うと自分が滑稽にみえてくる。
そのとき父親に低い声で呼びかけられた。
考え事に集中してしまいゲームをプレイする手が止まっていたからだ。
父親の顔を恐る恐る横目で確認すると、鬼のような形相で睨まれていた。
そのとき目が合い舌打ちをされ、深くため息をつかれる。
また何か次相手の機嫌を損ねるようなことをしてしまったら、私の体に危害を加えてくるだろう。
躾という言葉で暴力を正当化させて。
心に抱えているモヤモヤとした違和感が増すのが分かる。
それと同時に部屋を飛び出したい気持ちも大きくなったが行動する勇気はやはり微塵もない。
この地獄の時間が終わる事を祈る事しか出来なかった。