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「……神ちゃん先輩?」
「ん?あ、ごめん。急用じゃなかったみたい。で、ごはん…ちょっと待ってな」
のんちゃんに話しかけられて我に返る。
長い間レンジにかけたままのおかずを慌てて取りに行き、お皿に移す。
「……」
なんでこんなに辛いんだろう。
この前までの俺だったら着信くるだけできっと嬉しくて、流星にどうしようどうしようってLINEで言いながら出てたと思う。
だいたい、2人?とか男?とか、そういう詮索は好きな人にやるものだ。恋人にやるものだ。
俺はもう振られてて、俺らはあくまで友達で、押し倒したことなんか覚えてないくらい意識していない癖に、シゲに俺の事で踏み込んでくる権利なんてない。
「先輩」
「っ、ごめん俺また……っ」
考えすぎてまた手が止まっていたことにのんちゃんの声で気づき、再び謝る。……ホンマにあかん。
どうしてこんなにも参っているのか、自分でも分からない。振られた時も辛かったけど、あの時はここまで落ちなかった。
直接何か嫌なことされたわけでも、嫌なことを言われた訳でもないのに。押し倒したことだって、酒が入ってたんだから故意に忘れてたわけじゃないだろう。
告白して「ごめんなさい」の方がよっぽど辛くて嫌な事だ。
「今用意するから」
「まって神ちゃん先輩。ええんよ、辛いなら落ち着くまで待つし。ほんまに溜めんといて。気にせんから」
「、…ごめん」
「神ちゃん先輩はほんまに重岡さんの事が好きなんやね。男とか女とかそんなん超えてて、“重岡大毅”っていう人間が好きなんや」
「うん…」
「きっと毎日好きが募ってって、今しんどいんよ。恋愛ってそんなモンや。ちっちゃい事で一喜一憂すんねん。なんでこんなことで?ってことで喜ぶし、傷つくねん。」
のんちゃんは俺が学校にいた頃、恋愛マスターと呼ばれていた。本人は別に遊び人でも恋愛経験豊富でもないけど、物凄くモテる上に優しいので、頻繁にされる告白や恋愛相談など諸々対応をしていくうちに恋愛に詳しくなっていた。
そんなのんちゃんからの「恋愛ってそんなもの」という言葉に、今俺がどれだけ救われていることか。
恋愛小説は数え切れないほど読んできた。
ずっと架空のラブストーリーを追ってきて、その中で出会う主人公たちがぶち当たる辛い展開や悩みに一緒に涙したり怒ったりした。
でも、読むのと自分が恋するのとでこんなにもギャップがあるなんて思わなかった。
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作者名:しり切れとんぼ | 作成日時:2022年2月12日 10時