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数時間が経った。
夕食を済ませ、風呂も済ませ、いつでも寝れる状態。
ほどよく眠気も感じていたし、このままベッドに入って寝ようと思っていた。なんとなくウトウトしながら、ベッドへ向かう。
が、ベッドに入ろうとした時に聞こえた音が、俺を一気に現実へ引き戻した。
簡単な、ただ一音。
ドンッと、壁を殴ったような音。
それは、Aちゃんの部屋がある方の壁から聞こえてきた。
上着も着ないで、寝間着のまま、慌てて部屋を飛び出した。
隣の部屋のインターホンを押し、声をかける。
「Aちゃん!?すごい音したけどなんかあった!?Aちゃん、いる!?」
夜中にもかかわらず、大きな声を出す。
何度もインターホンを鳴らすが、反応は無い。
こういう時、ドラマや映画の世界だったら、どういう奇跡が起こっているだろう。
そうだ、鍵が開いている。
大事な時、鍵は閉まっていないのが王道だ。
この時間なら、大家さんはもう寝ている。
一か、八か。
深呼吸をしてから、ドアノブに手をかけた。
ドアノブは、呆気ないほど簡単に回った。
「Aちゃん、ごめん、入るね」
先ほどの深呼吸で取り戻した冷静さを失わないように、冷静に声をかけた。
「Aちゃん?いる?」
ゆっくりと、リビングへ足を進める。
「Aちゃーん…………坂下さん…?」
「んー、誰だ、神木くん?」
「はい、神木です。大丈夫ですか?」
「私は平気ー。ちょっと飲みすぎちゃって」
大丈夫に見えない坂下さんは壁に寄りかかっていた。どうやらさっきの音の正体は坂下さんらしい。
酔っているわりに、思ったよりもハッキリしている声で坂下さんは続けた。
「私より、Aちゃんヤバい。あれ飲んだのほとんどAちゃん」
坂下さんがゆっくりとした動作で指を差す。
その先を見ると、ローテーブルの上や床に散らばっている、大量の空き缶。もちろん、全てがアルコール飲料。残っているのは、机の上に置いてある数本のお酒しか無かった。
これは、ヤバい。
俺にもわかる。あの量は、いくらお酒に強くても、普通じゃない。
明らかにアルコール中毒になる量だ。
「私は平気だから、Aちゃん吐かせて」
坂下さんが言うのと同時に、ローテーブルのすぐそばに倒れているAちゃんに駆け寄った。
「Aちゃん、ごめん、ちょっと揺れるよ」
慌てたら、ダメだ。
こういう時だからこそ、冷静になれ。
出来るだけ揺らさないように、Aちゃんを抱えた。
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鼎(プロフ) - 自称 神木隆之介様 依存症さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(o^^o)のんびり更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2016年5月18日 6時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
自称 神木隆之介様 依存症(プロフ) - この小説大好きです!!更新楽しみにしてます!!頑張ってください!! (2016年5月18日 0時) (レス) id: dbd5180fdd (このIDを非表示/違反報告)
鼎(プロフ) - すずやさん» ありがとうございます!のんびり更新ですが頑張って更新していくのでよろしくお願いします(^O^) (2016年5月14日 0時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
すずや - すごい面白かったですー。更新楽しみにしてますー! (2016年5月13日 23時) (レス) id: eddc991718 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼎 | 作成日時:2016年4月12日 22時