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「帰ります。健くんには申し訳ないことしますけど、もうここにはいられません。いたくありません」
ガタッと席を立ち、薄手のコートに手を伸ばす。
「どうしたら話しを聞いてくれる?」
ドアを開ける直前。神木さんの横を通った時、手首を掴まれた。
細くても白くても、神木さんは男のひとで、簡単に振り払うことは出来ない。
以前、振り払ったような気はするが、その時は必死で、たまたま振り払えたんだろう。きっと神木さんも油断していた。
「…聞いてあげません」
「聞いてくれるまで離さない」
神木さんの真剣な視線と、私の冷ややかな視線が交わる。
思ったよりも力強く拘束されている右手首。少しずつ二人の体温が溶けていく。
「聞きたくありません」
「どうしても聞いてほしい」
必死に絞り出した言葉も、簡単に避けられてしまう。
「どうして…」
少しずつ、目の奥が熱くなってくる。
「どうして私なんかに構うんですか?酷いことたくさんしてるのに、なんで私を気にするんですか?どうして思わせぶりな態度とるんですか?」
声が震えているのがバレないように、笑っているように言葉を紡ぐ。
「私は、あなたが嫌いです」
嫌い。そう、嫌いなのだ。私は神木さんが嫌い。
「だから、必要以上に関わりたくないんです」
本当は仕事でも関わりたくない。二度と会いたくない。
「腹立つんです。神木さん見てると、イライラするんです」
ニコニコ笑っているのに、影では血を吐くような努力をしているあなたを見るのが辛い。
「神木さんなんて、嫌い」
頬を生暖かいものが流れた。
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鼎(プロフ) - 自称 神木隆之介様 依存症さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(o^^o)のんびり更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2016年5月18日 6時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
自称 神木隆之介様 依存症(プロフ) - この小説大好きです!!更新楽しみにしてます!!頑張ってください!! (2016年5月18日 0時) (レス) id: dbd5180fdd (このIDを非表示/違反報告)
鼎(プロフ) - すずやさん» ありがとうございます!のんびり更新ですが頑張って更新していくのでよろしくお願いします(^O^) (2016年5月14日 0時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
すずや - すごい面白かったですー。更新楽しみにしてますー! (2016年5月13日 23時) (レス) id: eddc991718 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼎 | 作成日時:2016年4月12日 22時