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帰ってしまおうと思って席を立とうとしたが、スタッフが、事前に健くんが予約していたコースの範囲でメニューを聞いてくるものだから、帰るタイミングを見失った。
「…なんか、ごめんね。たけちゃんに呼ばれたんだよね?」
「こちらこそ申し訳ありません。わざわざ足を運んでいただいて」
スタッフの人が部屋を出ていくと、小さく話し始める。
気まずい。
「今日も仕事お疲れ様。すごいね、NGほんとにないからびっくりしちゃった」
「監督と気が合うんです」
運ばれてきたシャンパンで軽く乾杯をしながらぎこちなく会話を続ける。
「川嶋雫監督かぁ、俺はあんまりわかんないかも」
「神木さんにはわからないと思いますよ」
絶対に。
その一言があるかないかでだいぶ違う。
必死にその一言を飲み込んだ。
「トウマも、マリの気持ちを理解する努力はするけど、出来ないでしょう?」
神木さんが話さなくなってしまった。私から話し出すことは無い。
「あのさ、俺、あの…」
「なんですか?」
「志田ちゃんの…ことなんだけど…」
「ああ、仲良くしてますか?とてもお似合いだと思いますよ。おめでとうございます」
作り笑いを貼り付けて神木さんの言葉を遮る。
まるで、聞きたく無いと言っているようなものだ。
「Aちゃん」
「志田さんてとても素敵な女性ですよね。小さくて可愛くて美人で、性格も良くて、なんでも出来る」
「Aちゃん」
「私なんかより素敵な女性ですし、神木さんと合っていると思います。手放したらもったい無いですよ?」
「Aちゃん!」
「………」
「聞いてほしいことがあるんだ」
「聞きたく無いです」
「志田ちゃんとは確かに付き合ってる。けど、志田ちゃんのこと恋愛対象として見たことは無いんだ」
「じゃあなんで付き合うんですか!?恋愛対象じゃないなら付き合ったりしませんよね!?」
「志田ちゃんに告白され時、気持ちが揺らいでたんだ。どうしたらいいかわからなかった」
「だから付き合ったって言うんですか?その場の雰囲気に流されて好きでも無い女性と付き合ったって事ですか!?最低!!」
「そうじゃ無いんだって!いやその通りかもしれないけどそうじゃ無いんだ!」
「じゃあどういうことなんですか!?志田さんの気持ち踏みにじってるようなもんじゃないですか!」
売り言葉に買い言葉。そして、私はこういう時に限って、口喧嘩で負けたことはない。神木さんは言葉に詰まっていき、次第に何も言えなくなっていった。
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鼎(プロフ) - 自称 神木隆之介様 依存症さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(o^^o)のんびり更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2016年5月18日 6時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
自称 神木隆之介様 依存症(プロフ) - この小説大好きです!!更新楽しみにしてます!!頑張ってください!! (2016年5月18日 0時) (レス) id: dbd5180fdd (このIDを非表示/違反報告)
鼎(プロフ) - すずやさん» ありがとうございます!のんびり更新ですが頑張って更新していくのでよろしくお願いします(^O^) (2016年5月14日 0時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
すずや - すごい面白かったですー。更新楽しみにしてますー! (2016年5月13日 23時) (レス) id: eddc991718 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼎 | 作成日時:2016年4月12日 22時