同じ世界 ２【神木隆之介】

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震える手を押さえつけて、まずは台本を読もうとページを捲る。

しばらくして台本を読み終え、最後のページをめくる。そこには川嶋雫の直筆で、何かが書いてあった。綺麗だけど、どこか狂気を感じさせる字形。

私は初恋というものを知りました。

その一文から始まる、１０行ほどの言葉。
初恋を知った。その言葉に驚きを隠せない。

私は初恋というものを知りました。
でもそれは、普段テレビで見るような感情を引き起こしてはくれません。私の中には汚い感情が渦巻くばかり。苦しくて、苦しくて、殺してしまいたいほど好きなんです。声を聞くだけで心の奥がキュッと締め付けられることはなく、ただただ、その声を私だけのモノにする方法を考えます。
私はおかしいのでしょうか？でも、考えるだけなら自由ですよね？

ああ、やっぱりこの人はこの人だ。歪んでいて、狂っている。

…出たい。この役を演じたい。演じられるのは、私しかいない。

そう、私しかいないんだ。

相手が神木さんでも誰でもいい。もう、どうでもいい。
私は、マリに"なりたい"んだ。

「坂下さん、私、大丈夫です」

ウトウトと眠そうにしている坂下さんに声をかける。

「やります」

坂下さんの目を見て言う。
坂下さんは、静かに、しかし力強く頷いた。

「わかった。頑張ろうね」
「はい」

きっと、もう大丈夫。

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