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「Aちゃん、お仕事」
「どうしたんですか?お葬式行ってきた後の顔してますよ」
「Aちゃんがお葬式行くことになると思う」
ある日、坂下さんが珍しく暗い表情で仕事を伝えてきた。差し出された台本を受け取り、表紙をめくる。
「…………嘘」
「有名な監督さんの作品だし、Aちゃん、この監督さん好きって言ってたから、引き受けちゃったんだけど…」
仇花の涙
マリ役 AA
トウマ役 神木隆之介
頭が真っ白になった。
一番上に書かれているということは、この二人はきっと主要人物。
ああ、とても憂鬱だ。坂下さんの言う通り、きっと私は今ひどい顔をしている。
監督の欄には、川嶋雫と記してある。
本当に有名な監督で、三年前、彼女が21歳の時にデビューし、一気に有名監督になった。
恋愛を恐ろしく真っ黒に描き、人々に恐怖を与える。彼女にが作る作品はだいたいがR15のフラグ付きだ。
驚いたのは、彼女がデビューした時。つまり三年前、彼女には恋愛の経験が全くなかったということ。
彼氏が出来たこともなく、まして初恋もまだ。恋愛作品には必要不可欠な恋愛の要素に、いくつか足りないものもあった。恋愛の経験値を聞いて、そのことに納得した。
ではなぜそのような作品が大ヒットしたのか。
彼女が描くことストーリーは、だいたいが"こんな恋愛はしたくない"、"殺したいほど愛してみたい"などといった、空想上の話だ。普通の恋愛ものも空想上の話ではあるが、リアルな気持ちが前面に出ている。彼女の作品は、リアルな気持が感じ取れない。あくまで"こんな感じかな"といった予想の気持ちだ。
どちらかというと、恋愛の気持ちより、劣等感や疎外感、空虚感。苦しい、気持ち悪い、辛いといった気持ちの方がリアルに表現されていて、私にとってはとても共感できるタイプの作風だった。
他人と違う観点。表現力。
それが彼女を有名監督に導いたキーポイントの一つだろう。
それから、彼女と会ったことのある人が声を揃えて言うことがある。
"変わっている"
必ずと言っていいほど、彼女は変わっていると言う。人形のようだと噂される。
テレビや雑誌に出ることは嫌うため、顔写真はあまり出回っていない。しかし、美人だと聞いたことがある。
笑わないし、人形のよう。たまに笑ったかと思えばそれは狂気でしかなく、その理由もブラックだ。
彼女に関する噂はいくらでもあり、そのどれも彼女は否定しないから、余計に変わっていると言われているのだろう。
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鼎(プロフ) - 自称 神木隆之介様 依存症さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(o^^o)のんびり更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2016年5月18日 6時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
自称 神木隆之介様 依存症(プロフ) - この小説大好きです!!更新楽しみにしてます!!頑張ってください!! (2016年5月18日 0時) (レス) id: dbd5180fdd (このIDを非表示/違反報告)
鼎(プロフ) - すずやさん» ありがとうございます!のんびり更新ですが頑張って更新していくのでよろしくお願いします(^O^) (2016年5月14日 0時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
すずや - すごい面白かったですー。更新楽しみにしてますー! (2016年5月13日 23時) (レス) id: eddc991718 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼎 | 作成日時:2016年4月12日 22時