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「なんか今月から新メニュー出てるらしいんだよね〜!すっごい気になってたの!」
「ほんとだ、美味しそう」
「でしょ〜?これ頼もう?Aちゃんも食べる?」
「失敗だったら怖いので、1つ頼んで二人で食べましょう。足りなかったらまた頼めばいいですし」
「それもそうだね。じゃあそうしよ!」
すみませーん!と元気良く店員さんに声をかける坂下さん。お酒と食べ物を注文して、ふたたび私の方を向いた。
「で?詳しく聞かせてもらいたいんだけど、まだ生傷?」
今日はあれから二週間から三週間ほど経っている。坂下さんはずっと待っていてくれたんだろう。今日も駄目そうなら、私が話せるようになるまで、ずっと。
「生傷ですけど、話します。多分、ずっと生傷のままなので」
「そんなに深いの?一体何やらかしちゃったの。神木くんまであんなヨソヨソしくなっちゃってさ〜」
運ばれてきたお酒のグラスを軽く合わせて、一気に飲み干す。
ビールじゃないけど、ちょっとお行儀悪いかもしれないけど、たまたま見てた店員さん驚いてたけど、構わずにそれぞれ二杯目を頼んだ。
次に運ばれてきたお酒は少しずつ飲む。
「深い…と、思います。なんかもう、よくわかりません」
少しずつ、ゆっくり、坂下さんに話をしてるうちに、涙が出そうになった。この前、泣いて、泣いて、これでもかというほど泣いたのに、まだ泣けるんだと、自分でも感心する。
ハンカチで目元を抑えながら、少しずつ、ゆっくり、小さな声で話していく。
店員さんが気を利かせてくれたのか、近くの席にあまり人はいなかった。
そもそも喫煙席だから、元々人は多くないけれど。
タバコは吸わないけど、吸える。それは坂下さんも同じで、大事な話をしたいときは、個室の店を選ぶが、喫煙席を選ぶ。
そして、この店の喫煙席を利用するお客さんはだいたい酔ってる人が多いから、あまり周りを気にしない。
「もう、申し訳なくて、何も出来ない自分にも腹が立って、直したいのに、受け入れられなくて、もう、わからないんです」
話し終わる頃には、運ばれてきていた新メニューの料理も、冷めきっていた。
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鼎(プロフ) - 自称 神木隆之介様 依存症さん» ありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです(o^^o)のんびり更新ですがこれからもよろしくお願いします! (2016年5月18日 6時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
自称 神木隆之介様 依存症(プロフ) - この小説大好きです!!更新楽しみにしてます!!頑張ってください!! (2016年5月18日 0時) (レス) id: dbd5180fdd (このIDを非表示/違反報告)
鼎(プロフ) - すずやさん» ありがとうございます!のんびり更新ですが頑張って更新していくのでよろしくお願いします(^O^) (2016年5月14日 0時) (レス) id: 50123c4a48 (このIDを非表示/違反報告)
すずや - すごい面白かったですー。更新楽しみにしてますー! (2016年5月13日 23時) (レス) id: eddc991718 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鼎 | 作成日時:2016年4月12日 22時