愛してその醜を忘る【短編集】

理解できない:草薙航基 ページ7

少し前、初めての彼女ができた。僕には勿体無すぎるほど可愛い、本当にかわいい。

「Aちゃん、」

『んー？』

当の本人は今 大好きな俳優さんが出ているバラエティ番組に夢中。

録画もしつつ生でも見てるから、後でも見れるんじゃないの って聞いたら “わかってないなあ” とだけ返ってきた。

「…なんでも、ない」

『ふふ、そう？
待ってね、もう少しで終わるから』

「うん…」

なんでだ、なんでなんだ、

画面の中で黄色い歓声を浴びる彼は 僕よりずっと格好良いのに、比べちゃいけないくらいなのに、

どうして僕と一緒に居てくれるんだろう

『草薙くん？』

「…っわ、」

『ふふ、終わったよ』

「…ち、近いよ…」

『そう？普通じゃない？』

こういう事に慣れていないから、突然 顔を近付けられると緊張してしまう

『ごめんね、待たせちゃって』

「…ううん」

『寂しかったんでしょ』

「ッん、」

『んーふふ、…ん、もっとこっち、』

本当にわからない。


録画をしながら生で見る気持ちも

格好良い芸能人を好きなのに、僕といる気持ちも

どうして何度もキスをされてるのにこんなに冷静に考えられるのかも

僕はきっと一生掛けても理解できないんだ

『…ん、

あのね、私は草薙くんが一番好きだよ』

僕からも何か伝えたくて、

この間なにかのテレビで聞いたやつ、

「つ、…月が、綺麗ですね、」

確か、愛してるって意味だった。

『…ずっと前から月は綺麗でしたよ』

思わぬ返事が来て、固まってしまう。

…伝わってない？でも、嬉しそうに笑ってる。

『ふふ、まだまだお子ちゃまだなあ』

Aちゃんの方が何枚も何十枚も上手だけど

その状況に満足している僕もどうかと思う。

同級生の弟:亜生→←サヨナラバス:石橋遼大

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