あと30日 ページ2
昨日から神童は、入院してしまった。
サッカー部の核が消えたのだ、
そりゃそうだ。
みんな戦意喪失。
みんなみんな。音無先生でさえ。監督でさえ。
俺はどうすればいいのだろう。
そんな時に立ち上がったのは天馬だった。
「皆さんそんな顔しないでください！神童先輩だってみんなが楽しくサッカーしてることが本望だと思います！」
「こんな状況で、サッカーなんて出来ますかッ…⁉」
速水は天馬と目を合わせずに叫んだ。
その表情は怯えているようにも見えた。
そうだ、俺たちは見てしまったのだ。
いつもトップに降臨していた神童が儚く崩れ落ちるのを。
。
。
。
。
。
その日は結局誰もボールを触らなかった。
学校の帰り神童の入院した病院に立ち寄ることにした。
�狄斉限鷽有�
と書かれた病室のドアを開けると
頭に包帯を巻いた神童がいつもの笑顔で手をひらひらと振っていた。
「なんだ霧野、そんなにしけた顔して。俺がまだ意識が戻らないとでも思ったか？馬鹿を言え、お前はだいたい…」
本当にいつもの神童だ。
それだけで涙が出た。
一昨日とは打って変わって、だいぶ落ち着いていたようだ。
「神童…！」
思わず神童に抱きつく。
「おっと…。全く霧野は心配症だな、まったく誰に似たんだか…、あ、俺か？」
そう言って神童は俺の頭を撫でた。
神童の好きなリンゴを2人で食べた。
あと1ヶ月しか生きられないということが信じられなかった。
いつも通り無駄話をして面会時間が終わるまでその時を楽しんだ。
じゃあな、おやすみ、と声を掛け合い外に出た頃はもう真っ暗だった。
この時神童は自分があとどれだけ生きられるのかを
知らない
続く
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作者名：立架 | 作成日時：2014年1月13日 7時
