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重岡side
「神ちゃん。着いたで」
今日の仕事は雑誌撮影と取材が2社。
帰るのはおそらく22時を越えるだろう。
先に濱ちゃんと小瀧が出て、
俺は一度も動かなかった神ちゃんを起こす。
けれどイヤホンまでしてるせいで聞こえておらず
いくら声をかけたところで目覚めることはなくて。
「しげ、早よ」
小瀧に急かされて、
仕方なく神ちゃんの肩を叩く。
それでも起きないから
今度は肩を掴んで強めに揺する。
そしたら大袈裟なくらい神ちゃんの体が揺れて
反射的と言うべきか、
自分を守るように両手が上げられた。
「っ…あ…しげ？」
「う、ん…着いたから、起こそうと思って、」
普通ではない反応に
若干固まりながら状況を説明してあげる。
すると神ちゃんは昨日と同じように
ゆっくり体の強張りを無くすために息を吐いた。
「ごめん。ありがとう」
微かに震えていた手を隠すように
自分の鞄を持つ神ちゃん。
そのまま俺を通り過ぎて車を出れば、
待っていた2人に驚きながら挨拶した。
「なにしてんの？」
「神ちゃん待ってた！ 一緒に行こ〜」
何食わぬ顔で小瀧が神ちゃんに並んで
スタジオへ向かう。
俺は何も言わず待っていた濱ちゃんと歩いて。
「あんな感じ？」
「…うん」
静かに聞かれたのは
昨日の様子と今の彼の様子。
「なんもないとええな」
独り言のように呟いた濱ちゃんの言葉は
俺が昨日から抱えていた不安のようで
どうか裏切られませんようにと頷くしかなかった。
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作者名：かみぶくろ
| 作成日時：2024年4月6日 0時
