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重岡side
あの公園から約10分。
神ちゃんのマンション前に着いて、
ゆっくりと車を止める。
「……なぁ、ほんまに大丈夫なん？」
「うん。大丈夫。ごめんな」
本当はパーキングにでも停めて
家まで連れて行ってあげようと思っていたのに。
それを神ちゃんが頑なに拒みまくって
1人で帰ると言い張るから
仕方なしにシートベルトを外すのを見守る。
疲れ切っている神ちゃんは
車を走らせている時も一言も喋らず
ボーッと外を見ていただけ。
長年一緒にいるメンバーではあるはずなのに
その横顔から何も汲み取ることが出来なかった。
「ほんまごめん。しげも気をつけて帰ってな」
「ん。なんかあったらまた電話して。
どうせ俺まだ起きてるからさ」
「………ごめん」
俺が言ったのは本当のこと。
台本の確認とか、番組のアンケートとか。
でも今の神ちゃんには
どれも気遣いに理由付けているとしか
思えないのだろう。
申し訳なさそうに眉を下げて、
ふらついたまま助手席から出てしまった。
「また飯行こや」
「うん。分かった」
さりげなく押してみても、
きっと実現しそうにない返事。
もどかしさはあるものの、
今の彼に何を言っても
マイナスにいきそうでなかなか踏み込めない。
し、神ちゃんが踏み込もうとさせてくれない。
「お疲れ」
「また明日な」
淡白な会話のあと、
逃げるように閉まる助手席のドア。
マンションのエントランスに入って
姿が見えなくなるまで彼を見届ける。
結局神ちゃんは一度も振り返ることなく、
俯いたまま俺の視界から居なくなった。
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作者名：かみぶくろ
| 作成日時：2024年4月6日 0時
