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緑side
音もない。柔らかい感触。
ただ合わせただけの唇でも
心臓は壊れるくらいドキドキしてて、
文字通り溺れそうなほど
しげへの気持ちで胸がいっぱいになってしまう。
ゆっくり離されれば
またズルい顔をした恋人。
全く。
そんな顔をされて、
あんなことを言われたら
どうしようもないじゃないか。
「……すき…」
「んひひ。神ちゃんのデレモードやぁ」
「うれし」とえくぼを見せるしげが
やっぱ眩しくてキュンとする。
でもカッコよく振る舞った割には
俺と同じくらい耳が赤くて
とんでもなくいじらしい恋人だ。
だからその溢れた感情さえも預けるよう、
そっとしげの背中へと俺も腕を回したのだった。
「……あ。せや。1個だけ言っといてい？」
「なに？」
「俺が人の変化とかにちょっと気付くようになったんさ」
「うん」
「実は全部、神ちゃんのおかげやから」
「え？ 俺？」
「ずーっと好きやってんもん。
些細なことも見逃したくないやん？」
「全然…知らんかった」
「会話のネタ作りたいってのもあったなぁ。
それに何より俺が気付いて言ったら、
神ちゃん毎回嬉しそうやってんもん」
そりゃもっと頑張ってまうやん？
恥ずかしいくせに伝えてくれる話に
こっちまで照れくさくなってしまう。
けど、そっか。
俺が片想いしてた時も…
しげは俺やから伝えてくれてたんか。
うわ。なんか気付くと余計恥ずかしい気もする。
(でも……それってつまり逆を言えば)
「しげも俺のこと考えてくれてんのや」
「今更？笑
俺ダサいくらい神ちゃん一筋やで？」
「んふっ。なんか、オモロいな」
「カッコ悪いと思うよ俺も。
今でも好きになってほしい気持ちあるし？」
「なんよそれ。笑
…カッコいいで。俺そういうとこ好き」
「それ、は……あかん照れる」
多分、俺より赤い耳。
その姿は可愛くて愛おしさが湧き出る。
だから今度はこっちから。
「しげ」
「ん？」
「もっと……俺のこと見ててな？」
静かに唇を当てたのは精一杯の頬。
こんなこと学校じゃ絶対しなかったけど案外一瞬で、
とんでもないくらい胸がドキドキと高鳴っていた。
目の前のしげは驚いたあと
すぐにまた俺の大好きな優しい笑顔を浮かべて、
えくぼを見せてくれたのだった。
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作者名：かみぶくろ
| 作成日時：2024年3月1日 23時
