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緑side
つい顔を上げて捉えた視線の先。
目が合ったしげは困ったように笑って、
ほんのりと耳を赤くしていた。
(っていうか…今なんて言った…？)
自分が思ってたことと真反対の言葉が聞こえて
次に出そうとしてた言葉を忘れてしまう。
そうこうしていれば
いきなりしげの手が伸びてきて、
腕を引かれるまま彼へと体が傾いた。
「ちょっと、」
「はぁ…ほんま、かわえぇ…」
「っ、なに急に…てかっ、ここはあかんって」
「むーり。離したらへん」
抱きしめられた腕から逃げようにも、
ここぞとばかりに力を入れてくるしげ。
少し前から始めた筋トレのおかげなのか
驚くほどびくともしなくて思わず顔を上げる。
目の前のしげはなんとも
だらしない顔をしていて
今度はこちらが戸惑う番だった。
「神ちゃん。今日デートしよぉや」
「また急なこと言う…」
「ええやん。な？ 放課後デート」
「まぁ…別に良いけど…」
「へへっ。やった」
「……いや、今はそうじゃなくて。
しげは呆れてないの？ 俺八つ当たりしてんで？」
「ん？ なんですんの？
むしろ死ぬほど嬉しいけど」
「だってこんなん初めてちゃうやん。
そろそろ信用しろやーってならんの？」
「ならん。
なんならずっと妬いて欲しいもん」
「なにそれ」
「えぇ？ だってさぁ、」
腕の中で俯いた俺を
覗き込みながら笑うしげ。
その表情には
微かな鋭さが見え隠れして、
ついその大きな黒目に吸い込まれた。
「俺のことばっか考えてる神ちゃん、
すっごい可愛くて大好きやから」
「っ、」
「やからもっと妬いて溺れて？」
「し、げ…」
くらっと来そうなクサい言葉に
喉の奥から引っかかった声が出る。
それでも今の自分の顔は
熱が回った色をしてるんだろう。
くすぐるように耳たぶをいじられて、
下からすくうように近づいて来たしげに
思わず目を閉じながら彼の制服を掴んだ。
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作者名：かみぶくろ
| 作成日時：2024年3月1日 23時
