あかん、めっちゃ好き。【赤緑】 (ページ41)

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赤side

「俺…神ちゃんのこと好きや」

「っ、」

海を眺めながら、
風に揺らめく神ちゃんが
どうしようもなく綺麗で。

つい胸を突いて出てしまったのは、
あの日と全く同じ言葉だった。

まだ14歳だった若すぎる自分の言葉。

それでもいっぱいいっぱいになった気持ちは、
簡単に止まってくれなくて
タイミングもなく伝えてしまった。

あの日と同じ。

握りしめた袋の重さも、
伝えた後に吹き出た汗の感触も。

驚いたように目を丸くして、
夏の暑さからほんのり染まっていた彼の頬まで。

全部、全部同じだった。

「しげ」

少し間を置いて聞こえてきた声も同じ音。

あの時は確かこのまま顔を伏せて、
苦しい覚悟をするように奥歯を噛み締めていたっけ。

……それでも。

あの日をなぞるように伸びてくる神ちゃんの手。

それがそっと握る手に重なったあと。

ふわりと微笑んで俺を見る神ちゃんが居た。

「俺も好き。ずっと」

嬉しそうに、柔らかい表情で伝わった告白の答え。

あの時と少し違うのは、
好きな実感を表すために浮かべたのが涙じゃなく
笑顔だというとこだろうか。

「…ひひ」

「んふふ」

体の力が抜けると同時に笑えば
照れくさそうに下を向く神ちゃん。

その顔も、あの頃とは違う姿だ。

(それでも…まだまだ全然足りひんな)

なんでも知ってると思ってたガキの頃から
＂好き＂の苦しさを知った中学も。

あれから3年経った今だってずっと変わらなくて
もっと神ちゃんのことを見ていたいと思ってしまう。

知れば知るほど好きになって
新しい表情を見ればまた恋に落ちるような。

どうしようもなく好きで堪らなくて、
自分だけの独占欲まで生まれるくらい
惚れ続けてしまうのだ。

「また来年も来ような」

「うん。約束」

ニコッと笑った神ちゃんが
ご機嫌に小指を俺へと差し出す。

それに躊躇することなく俺のと絡めれば、
また嬉しそうにキュッと固く結んでくれた。

ああ。やっぱり。

俺は一生、神ちゃんには敵わんのやろうな。

でも…それできっと良い。

だって多分。

ずっと俺が敵わないまま
愛し続けることが出来るんやろうから。