［独り占め］ ページ33
赤side
「おーい。さっきからどうしてん」
「……別に」
「テンションひっく。なに？ 寝起き？」
「そういえばずっと寝てたなお前」
ガヤガヤ談笑が広がる昼休み。
食べかけのおにぎりを一口食べながら
友達からの会話を右から左へと流しておく。
何十秒かに一回出てしまうため息。
自分自身もよく分からない曖昧な感情に
らしくないなと思いながらまたため息を吐いた。
「あのっ……」
「んぉ？ 神山やん。どしたん」
「いきなりごめんな。
ちょっと、しげに用事あんねんけど…借りてい？」
「おお。別にええよ」
「あ、でもこいつ今機嫌悪いから気ぃつけてな？」
「うん。ありがとう」
お弁当を片手に、現れた俺の幼馴染。
友達へ断りを入れたら
すぐに俺の腕を持って教室を出て行く。
「ちょっ…なに？ 神ちゃん？」
正直今は省エネモードがいいから
行き先を知りたいけど教えてはくれんらしい。
仕方なく黙って着いていけば
いつもの2人でご飯を食べる踊り場に着いて、
ようやく神ちゃんの手が離れた。
「しげ。ん、」
「……ん？」
先にストンと座った神ちゃん。
隣へ自分のお弁当を置けば、
ガバッと両手を広げてきた。
それから優しく微笑んで一言。
「おいで」
「ぇ…？」
どういう意味なんやろうか。
けれどせっかくハグの許しを得たからには
素直に体は動いて神ちゃんの腕の中へ収まる。
すると神ちゃんは
いつもみたいに恥ずかしがることなく、
ぎゅう〜っと腕を回してくれた。
なのに困ったような顔で笑ったあと。
「んもう。やっぱ熱あった」
「………へ？」
「まだ微熱かなぁ。寒くない？」
俺の理解より先に
神ちゃんの手がおでこに当たる。
いつもよりひんやりした彼の手のひら。
同時に今の自分が
どうして省エネモードにしたいのか
分かった気がした。
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作者名：かみぶくろ
| 作成日時：2024年3月1日 23時
