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緑side
学校では絶対口にしない言葉。
それでもこんなズルいシチュエーションには
つい流されて溢れてしまうなんて。
けど本気でそう思ってるから
仕方ないと許してほしい。
俺だって今すぐにでも
しげの恋人は自分やって言ってみたい
願望は持ってるんやから。
放課後だって時間さえ気にせずに
このまま手を繋がれてこっそりキスされて。
くだらない話をしながら
恋人繋ぎのまま帰りたい。
近くのコンビニで買い食いしながら
駅まで歩くのだって楽しいだろう。
冷やかされるのは嫌だけど、
しげの周りへ牽制できるのは
やっぱり魅力的だと思えるし。
(まぁ…そんなんしげは知らんやろうけど)
「……み、ちゃ…」
「っ、？」
もにょもにょ動きながら聞こえた声に
意識を現実へ戻せば、
無意識に力を込められる手。
そこから閉じていた大きな目が現れて、
お利口だった口から「あれ」と柔らかな音がこぼれた。
「んわ、神ちゃんやぁ」
呂律の甘い言葉と共に、
ドキッとするくらい優しく笑う顔。
この瞬間も恋に落ちたように
自分の心が彼へと奪われてしまうようだった。
「俺、結構寝てた？」
「んー、15分くらいかな」
「そっかぁ。…んふふ」
「なに。そんな顔して」
幸せに浸るような顔で
だらしない笑顔を浮かべるしげに
つい可愛くない悪態。
それでもしげは気にせず微笑んで、
俺の手を絡めてぎゅっと繋ぎ直した。
「学校で神ちゃんと2人きりやから。
それに手まで繋いでもうてさ？」
たまにはこんな日もええよなぁ。
なんて。
甘くて照れるほど真っ直ぐな気持ちに
胸が苦しくてキュンとする。
そのくせ「これは俺が寝ぼけて繋いだんかなぁ？」なんて
繋いだ手を見ながら意地悪な言葉まで言う有様だ。
ほんと、しげはズルい。
「もう。早く帰んで。誰か来たら嫌やから」
「ん。せやな」
名残惜しくなる前に
こっちから手を離したけど
寂しい気持ちは同じだろう。
立ち上がったしげも同様に
お互い誤魔化すようカバンを何度か持ち直しながら、
夕差しに包まれた教室を出て行った。
次に手を取ってくれるのはきっと、電車の中。
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作者名：かみぶくろ
| 作成日時：2024年3月1日 23時
