［秘密のラブレター］ ページ29
緑side
「しげ。これ女子から渡してって」
「え？」
昼休憩が終わる直前の時間。
いつものように友達と話していたしげへ
何食わぬ顔をしたまま2つの手紙を渡した。
「俺に？」
「うん。しげと幼馴染やから俺が頼まれた。
可愛い子やったで。多分後輩とちゃうかな」
「うっそ！ 年下にもモテんのお前！」
「誰から誰から？ 俺らにも見してー！」
割とあんぐりしてるしげに
押し付けるように手紙を渡して
うるさくなる会話を避けるように俺は退散。
椅子に座ってこっそりしげを見れば
気まずそうな顔で友達から手紙を隠していて、
乱暴に鞄へと突っ込んでいた。
「……」
騒ぎが大きくなる前に
タイミング悪くチャイムが鳴って
茶化す友人を追い払うしげ。
それでも手紙の存在は気になるらしくて、
始まった現代文の授業をそっちのけで
鞄からゴソゴソと手紙を取り出していた。
淡いピンク色をした可愛らしい手紙。
もうひとつはシンプルな白い封筒だ。
教科書で隠しながら何故か薄目で
まずはピンクの手紙から開く。
多分だけどちょっと照れてるのが分かって、
ノートへ突き立てていたシャーペンの芯が
ポキッと簡単に折れてしまった。
(別に。いいけどさ)
無意識に口が尖ってしまうのを
事前に誤魔化して手を当てる。
正直こんなことは中学の頃からそうなのだ。
どこまでも華があって人たらしな俺の幼馴染。
そのせいで片思い期間を含めて
今まで何回ヤキモチを妬いて
拗ねて泣いて失恋したか分からない。
前を向けば教科書の次のページを示す黒板。
小さくため息を吐きながらページをめくって、
照れながらもう一つの白い封筒へ手をつけるしげへ
こっそりと心の中で舌を出した。
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作者名：かみぶくろ
| 作成日時：2024年3月1日 23時
