［幼馴染で、恋人です。］ ページ1
赤side
「お前、意外に神山と仲良いよな」
「そう？」
放課後が始まった夕方。
部活がある友達と
ダラダラ部室までの道を歩く。
とはいえ俺は帰宅部のため、
束の間の駄弁りだろう。
そんな時に、
ふと友達が思い出したように
そう言ったのだ。
「幼馴染やっけ。その名残り？」
「んー……まぁ、そうかもな」
「へぇー」
今日の体育の片付けで
たまたま一緒にボールを直しただけのこと。
それでも友達からは
意外にも仲が良さそうに見えたらしい。
「普段喋ってないけど、昔とかは仲良かったん？」
「昔ってなんやねん」
「いやほら、喧嘩とか疎遠系なんかなーって」
「んなことないわ」
「そうなん？ なんか変な関係やなお前ら」
「まぁそれはそうかもな」
曖昧な相槌と同じタイミングで着いた部室。
特に引っかかることもなく
「じゃあ」と友達と別れて、
そそくさとその場を離れる。
そのまま校舎を出て小走りで最寄駅へ。
下校ラッシュにぶち当たるこの時間帯は
相変わらず人が多くて、
すでに到着してる電車へと滑り込むように乗り込んだ。
それから端のスペースへ移動すれば
自分とお揃いのイヤホンで音楽に浸る男の子が1人。
迷わずその子の隣へ移動して、
ひらひらと手のひらを見せれば
大きな瞬きと共に顔が上げられた。
「なんで先行くんよ。神ちゃん」
イヤホンが取られたのを見て
声をかければふふっと頬の上にえくぼを浮かべて
ケースへイヤホンをしまう。
「向こうで待っとこうかなって思って。
しげこそ、間に合うとは思わんかったわ」
「ん。走ってきた」
「ほんまや。ちょっと汗かいてる」
指先がこめかみに触れられて、
ドキっと胸が跳ねながら神ちゃんに見惚れる。
それからこっそりと
満員電車の中で手を重ねれば、
微かに絡まる指先。
チラリと目線が合うと照れくさそうに逸らされて、
バレないように唇を少し噛んでいた。
それが可愛くて、
また俺もニヤけるのを堪えるように
唇を固く閉じたのだった。
��「お前、意外に神山と仲良いよな」��
(当たり前やばーか)
だって俺たちは昔っからの幼馴染で、
大切な恋人同士なんやから。
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作者名：かみぶくろ
| 作成日時：2024年3月1日 23時
