無音の魔女は夜に歌う2[d!]

濁った記憶 ページ29

次の日、散々っぱら駄々を捏ねたショッピに乗せてもらい、アルフヘイムへと向かった
私含め7人乗ってなお広い背中
彼なりに配慮してくれており、揺れは少ない
正面から吹く朝の冷たい空気が目を覚ましてくれる
まだ半分寝ているコネシマにトントンが結構なビンタをしていたのは見なかった事にしよう
ついてきたかっただけとは言え、送ってくれているショッピに感謝の意を込めて背中を撫でると嬉しそうにグルル、と鳴いた

em「みなさん、アルフヘイムの前に少しの森があるのですが、そこには幻覚を見せる魔物がいます。その魔物の幻覚にかかり動けずにいる所をエルフに狩られるんです」

gr「対処法、とかは？」

em「幻覚だと思ったら即殺に攻撃するくらいしか…」

zm「めっちゃ飯ある幻覚とか見させられるんかな」

kn「ちょっと楽しそうやな」

そんな話をしている内に、森が見えてきた
森の少し手前でショッピに降ろしてもらい、名残惜しそうにするショッピに別れを告げた

em「…みなさん、細心の注意を」

ni「わかってる。お前らもだ」

tn「幻覚なら、すぐわかるやろ」

em「私に幻覚は効きませんが、ご自身の身はご自身で守ってください」

gr「わかった」

em「私は、心底魔法が苦手なので」

そう告げたエーミールに続いて、森へと入った
木々の隙間から入る、キラキラと光る日光。あちらこちらから聞こえてくる鳥や小動物の鳴き声
足元には小さく咲いた花や草
人間が手を加えないからこそ出来上がる、幻想的な自然そのものだ

特に何の異常もなく森の半分あたりまですすんだ
その為、警戒心が薄れていたのだろう
気がつくのが、遅かった




??「師匠！」

『ぇ……？』

私を呼ぶ、懐かしい声
ずっと、ずっと聴きたかった声

??「師匠…？どうかした？魔法の訓練は？」

『あ、えっと、』

気がつくとあたりはダークハイツにある私の家の前
暖かいそよ風があの子の髪を靡かせる
そうだ、私あの子に魔法を教えなきゃ

『そうね、今日はどんな魔法にしましょうか』

暖かい
これでいい
これがいい
夢だなんて、淡い物じゃ無ければいいのに

??「師匠、俺…師匠みたいな魔法使いになれるかな？」

『ええ、なれるわ。貴方ならきっと…』

??「なら師匠！もっと魔法の訓練しよ！俺頑張るから！」

『焦らないの。でも魔法に興味を持ってくれる事は嬉しいわ』

??「だって魔法楽しいから…」

『そうね、私も魔法が好きよ』


??「ねぇ、師匠……ここに、いて…いいの？」

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