21.そんなはずじゃなかった ページ21
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あれからというもの、
話すこと、ていうか話すこと自体が気まずくて私は喋れず。
かといって二宮さんだって話してくれないから、どうしたものかというところだった。
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和也「…色々と、ごめん」
「いやいや…私の方こそ」
和也「あなたはいいんだよ」
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弱い。弱そう。
余裕のある笑い方なんかじゃない。
…余裕なんてとっくのとうに消え去ったみたいな。諦めかけたような笑みだった。
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和也「なんも頼んでねーし、ここでさよなら？にする？」
「そう……ですね」
和也「んじゃ。」
「では」
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黄色いクマさんなんて取ってもらわないほうが良かった。
二宮さんのことなんて知りたくなかった。
胸に、変なモヤモヤを抱えたまんまあの美容院になんて行きたくないよ。
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二宮さん…。
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「…っあの！」
和也「…っ？」
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カツカツと歩いてた二宮さんのスニーカー。
私が呼びかけるとビクリと跳ねる猫背の体。
振り向くその顔。
……少しでも、また、話せるように。
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「…正直言うと、迷ってます」
和也「…」
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ピクリと動く眉毛。
その動き方からして、私が言いたいことを理解したのかはたまた動揺したのか。
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「…励ましてくれたこと、黄色いクマを取ってくれたこと、どうしようもなく心臓バクバクしたこと」
和也「…」
「…正直、潤くんといた中でされたことないです。」
和也「くふふ」
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喉を鳴らすような笑い方。
…二宮さん特有の笑い方だった。
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和也「嬉しい言葉、言ってくれるのね。狡い子」
「…」
和也「ありがとう。また、会おうね。今度は一緒にあったあの青いクマも取ってあげるからさ」
「…っ！ありがとうございます！」
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じゃあね、と左手を振る二宮さん。
私が座ってたソファーにがくんと腰を下ろす。
……潤くんのこと、好きなはず……なのに。
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また会うってことを約束してしまった。
……どういうことだ。
ここまでしなくてもよかった。よかったはずだった。
友達で居ましょうって、それだけでよかったはずだった。
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なのに、なんで、潤くんと二宮さんを比べるような言葉を言い放ってしまったんだろう。
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作者名：成瀬莉奈
| 作成日時：2017年8月23日 19時
