16.ばかじゃないの ページ16
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目に涙が溜まって目の前の景色が見えない。
……好きだったあの人は彼女がいた。
それを自分でも分かっていたはずなのに、実際それを見ると心臓が痛くなる。
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「……っ」
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その景色なんて見たくない。
1時間くらい前に二宮さんが言ってた「松本は彼女とラブラブしてるよ」って言葉。
本当に合ってた。当たってた。
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和也「…ばかじゃないの。」
和也「目ぇ隠せばいいんじゃん」
和也「ばか。」
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不意に見えなくなった景色。
二宮さんの温かい手が私の目元にある。
……その温かい手の温もりが、一層涙を溢れさせようとする。
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「二宮…っ、さんっ」
和也「泣くな、めんどくせーから」
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親友の女の子と、
ずっとずっと好きだった男の人と、
……そんな2人が付き合ってるなんて、前代未聞だと思わない？
世界は思ったよりも小さかった。ちっちゃかった。
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和也「…松本のどこがいいんだか」
「…ぅっ」
和也「片思いで泣くなんて、相当だよ、あんた。」
「……っ」
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二宮さんの顎が肩に乗っていることが、感覚からして分かる。
…体重が少しだけど乗ってるから、重たい。
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和也「ふぅ」
和也「…いい加減、諦めたら？」
和也「あんな男。」
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二宮さんの顎が肩に乗ってるから、言葉がダイレクトに耳に届くわけで。
二宮さんの低い声が鼓膜に響き渡るわけで。
……ちょっと、心臓痛いかな。
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途端に、キュンキュンという気持ちも芽生える。
……ばか、惚れちゃダメ。
そう、心の中で唱えても心のどこかで二宮さんのことを気になってる自分がいる。
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「二宮さ……」
和也「あ、いまあの2人キスした」
「えっ」
和也「あまあまなんですけど。」
「……っ」
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うるさい、
実況なんて、しないでよ……。
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作者名：成瀬莉奈
| 作成日時：2017年8月23日 19時
