カルテa『死体に夢を魅せるが如く』 ページ2
吾輩は猫である。名前はまだない。
いや、細かく解説すれば猫っぽいとよく言われる人間なのであって、名前はあるし輝基Aだし、あだ名がないってだけなのだが。
(なに考えてんのあたし・・・)
左前髪に着けた、淡い水色のクロスピンがずりりと下がり、妄想に更けていたAは慌てて元通りにかけ直す。
撮影に早速取り掛かる為、Aは東京都内で繰り広げられる高校バレーの大会、IHの開催地である体育館に足を運んでいた。
同じくカメラを両手に構える、他校の生徒やテレビ局の人々がみな、準備を進めながらコートを見ていた。
試合は既に始まっており、どこだか分からないチームとチームが血眼でぶつかり合い汗を流している。
バレーシューズの擦れる音、床を踏み抜く重低音、ボールが腕で弾ける音が、Aの耳を襲う。
「はあ」
"ある事情"で大きな音が苦しいAは、眉を寄せながら試合表を広げた
音駒高校バレー部が他校と戦う時刻は13時30分から。
「じゃあ、セッティングしようかな」
◇◇◇
心臓が大きく高鳴った。
闇しかなかった空間に世界が創られたような感動。理性を働かせる数値を、神様は、否この者たちは簡単にいじって、Aを真っ白な何処かに立たせてしまう
カメラのレンズ越しにしか観ないと決めていた筈だ。なのに、それなのに、音駒バレー部の男達はそれを許さない。
ベストショットを撮った刹那、手から力が抜けAはゆっくりと顔を上げた。そうすれば目の前に拡がるのは猛獣の"ゴミ捨て場"だった。
「な、にこれ・・・・・・?」
それ以上声は出ない。喜びの鳥肌が止まらない。ただ目の前のプレーが自分の世界を刺激する。
かっこいい。この一言に尽きる。
主将、黒尾鉄朗率いる音駒バレー部のその動きは、靱やか、そして鋭い視線の大戦争。爪を限界まで研いだ猫の群れが、静かに、けれど獰猛に敵に襲いかかる。
生き残るために、食われぬように牙を剥く
涙が、零れた
輝基Aが音駒バレーに堕ちた瞬間だった
嗚呼。
もうこの音は聞かないと・・・そう心にしていたのになぁ。
涙を拭い、天を仰ぐ。睫毛に被せた塩水は照明に照らされて輝き、その奥、瞳には暖かな炎が宿っていた。
こんな事をしている場合じゃない。
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作者名:KAME | 作成日時:2018年10月1日 18時