ディケイド/門矢士という写真家 ページ1
彼は1年ほど前にこの街にやってきた。
出会った時は記憶があやふやで、自分の名前と歳を覚えているだけだった。
持っていたのはトイカメラだけ。
写真家と言っているが、撮る写真はなぜか人が写らない。
いつも謎の人型をした機械のようなものが写り込む。
彼は何者なの？
そんな私は光夏海。
いつも彼のカバーをしていると〜ってもいい人よ。
「おい、夏海、写真撮り行かないか？」
…士はいつもこう。
謎の写真しか撮らないくせに。
「はぁ、いつもみたいな写真しか撮らないならもう付き合わないからね。」
もう、うんざりよ。
お金はバイト稼いでくるし、家事もできるのに、なんで写真を撮りに行くのよ…。
「今日は多分撮れるから。行くぞ夏海」
「ちょっ、士君、ひっぱらないでよ？！」
いつもこうやって強引に連れて行こうとするんだ…。
はぁ、今日もくだらない写真遊びに付き合うのか…。
「おい、何ボーッとしてんだ、車乗らないのか？」
「車？あんた免許持ってんの？」
というか、なんでそんな遠くまで行くのよ…。
「少し前に取れたって言ったろ。」
「そうだったっけ？覚えてないわ、しかも初心者マークは？貼らないの？」
車買えるほどのお金あったかなぁ？
じゃない、とにかく私は家にいたいのに…。
「ダサいだろ、かっこいい車に初心者マークなんてよ。」
…此奴の慣性ってどうなってるのかしら。
「とにかく、私は行かないから。1人で行って来て。」
はぁ、もう、私は忙しいのよ…。
「…だったら俺も行かない…。」
はぁ？行きたいんじゃないの？
私が行かないから行かないって？
「わかったわよ、行くから…機嫌直しなさい…」
全く、してやられたわ。
「じゃ、アクセル全開で行くぞ？」
はぁ、車で休もう…。
「はっ？」
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作者名：Applelose1028 | 作成日時：2023年3月20日 23時
