ダサいのがバレたから、偽カノすることになった 4th【及川徹】

114話 ページ10

水道に到着。
未来ちゃんが説明し、一通りやってみせる。

簡単だしできるでしょ……と、思っていたらビッシャア！と液体が後方に降り注いだ。

「ふぇ、あっ、あれぇ……？」

「つ、次の仕事してみよっか。未来ちゃんドリンク頼んだ！」

未来ちゃんは小さく舌打ちをして、はーいと気だるげな返事をする。

涙目になっている花園さんの肩を後ろから掴み、今度は部室へ連れていく。

「部員のタオルはここにしまってあるから、皆が練習し始めたら取りに来るの。
洗濯機は各部が共同で使うことになってるから、順番守ってね」

「はいっ！」

ビシッと敬礼をして、少し興奮気味の花園さん。
なんかなー……。少女漫画のヒロインにでも憧れてんのかな。

私あんまりこういう子好きじゃないんだよなー｡


「じゃあ、次の仕事は＿＿」

「えっ、タオル持っていかなくて良いんですか？私やりますよっ！」

記録などを教えようとした時、花園さんに遮られる。
顎に右手の人差し指をつけて首を30°くらい左に傾けている。

「えっ、いやでも仕事をおおまかに説明しとこうと思って」

「入部してからでも大丈夫ですよぉ！私やっときますね！体育館に運べば良いんですよね？」

ニコッと爽やかな笑顔で問われる。
いやだから、ほかの仕事教えるって言ってんじゃん。話聞いてよ……。

「……分かった。じゃあ体育館に持って行って。ベンチのそば置いとけばいいから。困ったことがあったら私水道にいるから聞いてね」

「分かりました！初めてのお仕事でしゅねってぁ……噛んじゃいましたぁ……」

えへへ、と照れている花園さん。
割りばしでも咥えて滑舌矯正しとけば？

「じゃあ頑張ってね」

「はい！」


.

「未来ちゃん！」

「あれ、あの子は？」


水道まで走って話しかけると、顔を上げて私に尋ねた。
「あの子」とは、言わずもがな花園さんだろう。名前を口に出して言うのが面倒くさくなったのだろうか……。


「タオル運ぶって聞かなくて……」

「へぇー、でもそれくらいできてくんないと困るよね」

「流石にね……」

はは、と苦笑いをする。


その後は、談笑しながらもドリンク作りを進めていた。

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